フォーエバーヤング「大接戦3着」でますます加速!? 3歳ダートNo.1の歴史的快挙を手放しで喜べない事情
「スポーツで最も偉大な2分間」ケンタッキーダービー制覇に現実味
「この経験は今後に活かさなければなりませんし、間違いなく活きてくると思います」
米国クラシックの頂点まで、本当にあと一歩だった。5日、米チャーチルダウンズ競馬場で行われたケンタッキーダービー(G1)は、アメリカのミスティックダンが勝利。日本から参戦したフォーエバーヤング(牡3歳、栗東・矢作芳人厩舎)は惜しくもハナ+ハナの3着に敗れた。
出遅れや最後の直線の接触を跳ね返したフォーエバーヤングの走りは、現地メディアが「3頭の勝者」と称えるほど。最後は本当にわずかな差だっただけに、主戦の坂井瑠星騎手も矢作調教師も「あそこまでいったら勝ちたかった」と口を揃えている。
また、13番人気(JRAオッズ)の低評価に甘んじていたテーオーパスワード(牡3歳、栗東・高柳大輔厩舎)も終わってみれば価値ある5着。デビュー3戦目が海外遠征という厳しい中での善戦もあって、レース後には木村和士騎手が「この経験を活かせれば今後もすごく期待できると思う」と言えば、高柳調教師も「今日の走りができれば、日本でも十分活躍できると思う」と収穫の大きさを強調している。
武豊騎手とスキーキャプテンが初挑戦した1995年から29年、芝の最高峰・凱旋門賞(仏G1)よりも勝つことが難しいとまで言われた「スポーツで最も偉大な2分間」ケンタッキーダービーだが、その栄誉を日本競馬が手にする日がいよいよ現実味を帯びてきた格好だ。
加速する日本馬の海外挑戦と今年誕生したダート三冠路線
一方、ケンタッキーダービー挑戦、そして米国クラシック制覇への熱が年々高まっている中、それを手放しで喜べないのが、JRA(日本中央競馬会)とNAR(地方競馬全国協会)が手を取り合うことで今年に産声を上げたダート三冠ではないだろうか。
すでに皐月賞、桜花賞にあたる羽田盃(G1)が先月24日に行われたダート三冠戦線。勝ったアマンテビアンコが珍しい白毛の馬ということで注目を集めたが、レースはフルゲート16頭の半数にあたる8頭立てと寂しい中で行われた。
少数精鋭といえば聞こえはいいかもしれないが、JRAこそ既定の4頭が出走したものの12頭の出走が認められている地方所属馬の回避が続出……。馬券売り上げこそ13億7056万4200円で前年比145.2%とレコードを記録したが、すでに交流G1として定着している昨年の帝王賞の44億881万600円、東京大賞典の82億9054万6100円と比較すれば、決して満足のいくものではないだろう。ダート三冠を旗印として行われた「ダート革命」に対する中央と地方の温度差が浮き彫りとなった。
さらに、盛り上がりの頼みの綱となるJRA勢も昨年の全日本2歳優駿(G1)を制したフォーエバーヤングは、前述の通りケンタッキーダービー挑戦を選択。これで昨年のデルマソトガケに続き、ダートの2歳王者は2年連続で同レースに挑戦したことになる。
「かつては挑戦すること自体が稀だった米国のクラシックですが、2017年に出走馬選定ポイントシリーズ『JAPAN ROAD TO THE KENTUCKY DERBY』が誕生、2020年にサウジC(G1)と同時にサウジダービー(G3)が創設された影響もあって、ここ数年は日本の米クラシックや海外挑戦が活発になっている状況です。
ただ、ダートの有力3歳馬を持つ各陣営が海外遠征を選択したのも、JRAでは5月のユニコーンS(G3)まで重賞がないなど、国内のダート路線の整備が遅れた結果。今年になってようやく大きな整備が行われてダート三冠路線が誕生しましたが、後手を踏んでいる感は否めません。
今年が新体制の開幕であるにもかかわらず、先月の羽田盃も桜花賞や皐月賞ほど大きくは報道されませんでしたし、このまま企画倒れしなければ良いのですが……少し心配です」(競馬記者)
なお、来月5日にはダート三冠の第2弾となる東京ダービー(G1)が行われるが、ケンタッキーダービーを戦ったフォーエバーヤングやテーオーパスワードの出走は望み薄と言わざるを得ないだろう。
三冠の頂上決戦となるダービーだけに、まずはフルゲートになることを祈りたい。
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