小牧太「JRAラストライド」は12番人気V!「好判断」の連続がこの日唯一の100万馬券もたらす
21日の小倉競馬は、メインの中京記念(G3)をアルナシームが勝利。騎乗した横山典弘騎手は5月の日本ダービー(G1)以来となる重賞勝利を挙げた。
その一戦で最下位14番人気のワールドリバイバルに騎乗していたのが小牧太騎手。冒頭のコメントは小牧太騎手のもので、中京記念では積極策で見せ場をつくったものの11着に敗戦。同じ学年でもある横山典騎手の後塵を拝する形となった。
大ベテランが最後の最後に存在感を発揮
ここ数年は騎乗数が激減し、勝利からも遠ざかっていた56歳の小牧太騎手。新たな活躍の場を求め、今年度のNAR(地方競馬全国協会)騎手免許試験を受験し、見事に合格。8月1日付で古巣の園田競馬に復帰することが決まっている。そんな小牧太騎手にとって、この日はJRAの騎手として最後の日でもあった。
先述した通り、中京記念は渾身の騎乗が実らなかったが、直後の最終12レースでは、巧みなベテランの技を如何なく発揮していた。
同レースでコンビを組んだのは、昨年1月に新馬戦を勝ち、その後は12連敗中というモズアカボス(牡4歳、栗東・矢作芳人厩舎)。15頭立ての12番人気、単勝オッズは57.8倍の伏兵だった。
近走の走りから苦戦が予想されていたモズアカボスだが、テン乗りの小牧太騎手はスタートからゴールまでほぼ完璧な立ち回りを披露。JRA所属騎手としてのラストライドを白星で飾った。
勝因は幾つかあるが、ゲートを決めたことも大きかった。15頭で一番いいスタートを切ったモズアカボスは、ズブい面を見せつつも、鞍上の効果的な出ムチ2発もあって先行集団に取りついた。
そこから終始内ラチ沿いの3~4番手を追走。メンバーで最も走破距離は短かったはずだ。それだけ距離ロスのない圧巻のコース取りだった。
ただ何度かピンチもあった。最初のコーナーの入り口でやや窮屈になると、モズアカボスは嫌がって後退しそうになった。しかし、ここで小牧太騎手は気合をつけて好位を確保。もしここで中団に下がっていれば、違った結果に終わっていたかもしれない。
結局、逃げ馬のすぐ後ろにつけたモズアカボスは、流れに乗って好位を追走。3~4コーナーの勝負所で無理に外に出すことはせず、逃げ馬の直後でじっと我慢した。これも最後の末脚につながったはずだ。
そして迎えた最後の直線は、内に1頭分のスペースがあった。小牧太騎手は最内を突こうとしたが、その瞬間、逃げたジャスパーロブストが内によれたため、モズアカボスの進路がなくなりそうになる絶体絶命のピンチを迎えた。
ところが一瞬の判断で、小牧太騎手は右ムチを振るって外に切り返すと、あとはジャスパーロブストを捉えるだけ。残り50mで計ったように交わし去り、先頭でゴールに飛び込んだ。
「最後の直線で外に切り返していなければ、前が壁になっていたかもしれませんね。このレースはスタートからゴールまで、終始大ベテランの手綱さばきが冴えに冴えていました。
また、2~3着にも、5番人気と10番人気の伏兵が入ったため、三連単の配当はこの日の3場・36レースで唯一の100万超えとなる131万馬券。最後の最後に小牧太騎手が意地を見せてくれました」(競馬記者)
小牧太騎手がJRAのレースで美酒を味わうのは、2022年10月2日以来、なんと1年9か月ぶりだった。その間に膨らみ続けた連敗は「109」に達していたが、ラストライドで積もり積もった鬱憤を晴らす格好となった。
「これから園田競馬場に行って頑張ろうと思うので、園田競馬場にぜひ足を運んで、小牧太を応援してください。お願いします」
約20年に及ぶJRAでの騎手生活にピリオドを打った56歳は、古巣で新たな伝説を築けるのか。JRA 911勝目を挙げたその手腕を見る限り、その可能性は十分ありそうだ。