JRA追放者と本宮ひろ志の力作、 幻の競馬漫画「勝算(オッズ)」を知っているか?
他の主な登場人物は警察官の熊井、そして競馬会の大島理事長、北条の妻と息子、そして北条を理解する騎手の俵正貴と馬主の西山田など。
物語は北条の息子が何者から誘拐されるシーンから始まる。そして犯人からの要求はただ一つ。
「皐月賞で北条が乗るマイホープを勝たせること。騎手の乗り替わりや馬の出走取消は認めない」
なるほど、誘拐事件において犯人側で最も難関となるのは身代金の受け渡しだ。それを現金ではなく馬を勝たせることで馬券を通じて手に入れる。その払戻は一般人に紛れてしまえば誰も気付かないのだから、発想は斬新である。
しかし八百長を認めない競馬会はこの要求を拒否して公正競馬の確保を優先する。それに対し理事長の娘である北条の妻は取り乱すが、そこで北条が「俺がやる。俺がマイホープを勝たせる」と立ち上がったのだ。
そして北条がレース前日に厩舎のマイホープに会いに行き、厩務員や調教師がいる前で鞭を振り回して「本気を出して走れ!」と威嚇するのだが、これがこの漫画最大の見どころといってもいいだろう。
「お前の命を俺にくれ、俺の命をやる」
その北条の覚悟がマイホープに届き、遂に覚醒するのである。そしてパドックでマイホープに跨り返し馬に出た瞬間、北条は驚愕する。
「俺はお前という馬を見誤っていた」