JRA追放者と本宮ひろ志の力作、 幻の競馬漫画「勝算(オッズ)」を知っているか?
マイホープが返し馬で見せた脚力、そして走りは北条だけでなく他の3人の目に留まり、尾加部が「まったく別の馬になっている」と語るように、皐月賞は4強対決となっていくのだ。
その後の騎手心理が絡み合った緊張感のあるレース展開は、機会があればぜひ漫画を読んでもらいたいところだが、結果はマイホープがレース後に骨折となるほどの激闘を制し世界レコードで優勝、誘拐された長男も無事に解放されて一件落着となる。
ただレース後にターフビジョンで、わざわざ誘拐事件があったことをファンに公表するのはいかがなものかとは思う。それこそ八百長騒ぎになるような案件だ。
なお残念ながらこの「勝算(オッズ)」は原作者である田原が調教師となった後、2001年に銃刀法違反と覚せい剤取締法違反で逮捕され、JRAは田原の調教師免許を剥奪。さらに2009年にも大麻取締法違反容疑で懲役10月、執行猶予4年の有罪判決を受けるなど不祥事が続いたこともあり、競馬界から完全追放状態へ。田原の存在そのものが競馬界の黒い歴史となってしまった。
そのためこの漫画は2006年の再発行(講談社プラチナコミックス)を最後に書店でみかけることはなくなってしまった。ただブックオフなどの古本屋、あるいはネットオークションなどで見かける機会はあるかもしれない。万が一見かける機会があればぜひ手に入れてもらいたい。今の競馬ファンでは体験できない昭和の競馬場の雰囲気、そしてあのスリルと騎手心理の描写はまさに名作といっていいものである。