【中山記念回顧】”史上最強馬”が帰ってきた! ドゥラメンテ『世界制覇』へ残る課題は”悪癖”の解消?
日本ダービー制覇以来の約9か月ぶりも、プラス18kgも関係なかった。ドゥラメンテは、やはりドゥラメンテだった。
28日に開催された第90回中山記念(G2)。3世代にわたる皐月賞馬の競演や、2冠馬ドゥラメンテの復帰戦として注目されたが、もはや常識では測れない昨年の最優秀3歳牡馬は”一発回答”で中山に詰めかけたファンの期待に応えた。
2冠馬ドゥラメンテ、そのライバルのリアルスティール、新鋭の大器アンビシャスら4歳勢に加え、イスラボニータやロゴタイプら皐月賞馬、ラストインパクトなど強豪が集い、まるでG1のような異様な雰囲気に包まれた今年の中山記念。
レースはアンビシャスがやや出遅れ気味だったことを除けば、各馬順調なスタート。約9か月ぶりの復帰戦ながら単勝2.1倍の1番人気に推されたドゥラメンテも、いつになく良いスタートを切った。
各馬の隊列は、すんなりと決まり1コーナーへ。ダービーや皐月賞では中団より後方で競馬していたドゥラメンテだが、スタートが良かったこの日は無理せず好位につけた。
ただ、裏を返せば鞍上のM.デムーロが想定していたよりスタートは”良過ぎた”だろうし、外枠だったため前に馬を置けなかった結果の位置取りだったとも言える。
ドゥラメンテが母系に持つダイナカール一族の気難しさを考えれば、前に馬が置けなかったことと、久々のレースで折り合いに苦労する場面があってもおかしくはなかった。実際に1コーナーを回った際は少し力んでいるようにも見られたが、すぐに本来のフォームに戻った。この辺りは、さすが絶好調・デムーロの腕である。
逃げたカオスモスが引っ張るペースは1000mの通過が59.4秒。やや縦長になったが、ペースとしては例年通りといったところ。ドゥラメンテは5番手を追走、それを見るように内からリアルスティール、フルーキー、イスラボニータと続く。アンビシャスは後方から2番手で、鞍上のルメールは直線に懸ける腹をくくったようだった。
レースを動かしたのは、やはりドゥラメンテだった。3コーナーを過ぎた辺りから外へ持ち出されて進出を開始すると、楽な手応えのまま先頭に並びかける。4コーナーを回ってもリアルスティールはまだ内で脚をためたまま、アンビシャスも後方のまま外に持ち出されていた。
最後の直線に入り飛び出したラストインパクトに、すかさずドゥラメンテが競り掛ける。昨年のジャパンCの2着馬をあっさりと競り落とすその走りは、まさに「王者」と呼ぶに相応しいものであり、この時点で誰もがドゥラメンテの復活を予期しただろう。
ゴールまで200mを通過した辺りで早々に先頭に躍り出ると、あとは「ドゥラメンテ劇場」のフィナーレを見るだけのようにも思えた。しかし、手応えのわりに後続を突き放せなかったのは、久々の影響よりも先頭に出たことで物見する悪い癖が出たせいだろう。
最後の最後で直線に懸けていたルメールとアンビシャスの猛追を受けるが、クビ差残ったところがゴール。「王者」が見事、王者として凱旋した。
最終的な着差こそクビ差だったが、今回のドゥラメンテは9か月ぶりの休み明けで陣営が「8分の仕上げ」とコメントしていたことはもちろん、抜群の仕上がりだったアンビシャスとは2kgの斤量差がある。
早々に先頭に立ったせいで物見をしていたことも含め、3着に敗れたリアルスティール共々、同世代との圧倒的な力関係は変わっていないようだ。ドゥラメンテの未来は極めて明るいといえる。
ただ、課題も残った。4コーナーでは手前を上手く変えられず、やや外に逸走。皐月賞の時のような”派手さ”はなかったものの、相変わらず右回りには悪癖が残っているようだ。また、抜け出して物見をする癖もダービーの時から解消されていない。
能力がずば抜けて高いことは今回のレースで改めて証明したが、こういった弱点が解消されなければ後々、大事なレースで思わぬ形で足をすくわれかねないだろう。
いずれにせよ、海外遠征が予定されている次走のドバイシーマクラシックは得意の左回り。一叩きされてさらに良化が見込めることはもちろん、今の日本競馬の「エース」の走りが世界でどの程度なのか――。
世界各国の競馬関係者の度肝を抜く可能性も含め、しばらくドゥラメンテから目が離せなさそうだ。