
未完の大器・アンビシャスを先行馬に変えた「天才」横山典弘騎手。大胆不敵な奇策の「原点」は宝塚記念に
そんな杉本清アナウンサーの実況と共にレースを制したのは同門”メジロ軍団”の中でも、後に史上最強馬となるメジロマックイーンだった。メジロライアンと横山典騎手は、最後の直線入り口で3番手まで進出する積極的な競馬で勝ちに行ったが、最後までマックイーンを捕らえることができなかった。
クラシック3戦を2、1、1という人気で迎えながら3、2、3着に終わったメジロライアン。同馬が「未完の大器」と言われ始めたのも、この頃からだった。
そこでオーナーであるメジロ牧場は、年末の有馬記念(G1)に向けて一計を案じる。メジロライアンを年末のグランプリに勝たせるために、最大のライバルとなるメジロマックイーンを回避させたのだ。
G1未勝利馬ながらファン投票4位の支持を得て、有馬記念に挑んだメジロライアン。オーナーの思いに応えるためにも渾身の仕上げが施されたが、今度は怪物オグリキャップの奇跡のラストランの前に沈む。
競馬史に残る万雷の拍手が中山競馬場に降り注ぐ中、またも涙を飲む羽目になったメジロライアンと横山典騎手。二人にとって生涯一度のクラシックシーズンは、こうして幕を閉じた。
翌年、競馬ブームを牽引したオグリキャップが去り、競馬は新たな時代を迎えようとしていた。
古馬になったメジロライアンは必勝を期して中山記念(G2)に出走したものの、単勝1.4倍に支持されながらも、格下のユキノサンライズに逃げ切りを許し2着。続く天皇賞・春(G1)でも後方からレースを進めたが、先行から堂々抜け出しを図ったメジロマックイーンの影さえ踏めず、4着に敗れた。
期待されながらも勝てない日々。勝ち切れない原因に、若い横山典騎手の騎乗を挙げる声はメディアを中心として日に日に大きくなっていた。
だが、メジロライアンを管理し横山典騎手の叔父にもあたる奥平調教師が、その防波堤となって若いコンビを守り続けた。肉親の間柄でもあるが、それ以上に一人のホースマンとして、今後の競馬界のために若い騎手を育て上げることの重要性を深く理解していた師は、オーナーに頭を下げてでもコンビの存続を強く求めた。
しかし、それでも未完の大器とまで評されるメジロライアンが、本当に未完のまま終わることは、いくら古き良き競馬時代の競馬であったとしても許されることではなかった。続く、宝塚記念(G1)は、横山典騎手にとってまさしく「背水の陣」で挑む一戦となった。
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