「淀はお庭」武豊騎手の神騎乗なるか!? 不安と期待「北島三郎史上最強馬」キタサンブラックで「まつり」準備万端?

Sports Graphic Number 888号(文藝春秋)

 いよいよ間近に迫ってきた古馬頂上決戦・天皇賞・春(G1)。今年はグランプリホースから新勢力のスタミナ自慢、古豪が集うハイレベルな戦いが予想されている。

 そんな中、馬券的な人気は別として1、2を争う大きな注目を集めているが、昨年の菊花賞馬キタサンブラックだ。大御所演歌歌手、北島三郎が所有する馬として昨年のクラシック戦線に顔を出した段階から大きな注目を集めている同馬だったが、単なる”イロモノ”ではなかった。現在9戦5勝、重賞を3勝でG1も制し、馬券圏内を外したのも粘りと立ち回りを武器にする同馬に明らかに向いていなさそうな日本ダービー(14着)のみと安定感も抜群。折り合いの良さは淀の3200mでは大きな武器となるに違いない。

 しかし、主に中距離で強豪を輩出するディープインパクトと同血のブラックタイドが父、母父がスプリント界にその名を刻むサクラバクシンオーという血統から、同馬が本当に3200mをこなせるのかという疑問は拭いきれないのが現状。制覇した菊花賞も本サイトの【徹底考察】で紹介した通り、非常に特殊な流れの中を上手く立ち回っての勝利だったことがわかる。こうした「不安要素」もまた、同馬が注目される理由の一端だろう。

 さらに、今回キタサンブラックに騎乗するのは「平成の盾男」武豊騎手。天皇賞・春の勝利数は1989年のイナリワンに始まり通算6勝と圧倒的。勝利こそ10年前のディープインパクトから遠ざかっているものの、2012年にはウィンバリアシオン3着、13年にはトーセンラーで2着とコンスタントに結果は出せている状況だ。通算連対率0.545という数字も圧倒的である。

 キタサンブラックは脚質にはある程度幅があるものの、基本的には「逃げ・先行」のレーススタイル。他に確たる逃げ馬が存在しないとされる同レース、同馬がレースを引っ張る可能性は決して低くないだろう。

 ネット上でも「武が逃げるとレースが締まるからいいな」「長距離が抜群に上手い武さん騎乗なら買わねば」とこのコンビをポジティブに捉える声が多数。しかし、不安な声があるのも実情だ。

 前述の血統不安から「逃げて3200mは残れない」という意見も非常に多い。菊花賞でも同馬は逃げをしなかったのも事実。仮に番手でレースを進めたとして、近くにいるのは本命視されるゴールドアクターやそのライバル・サウンズオブアースが想定される。厳しい流れになって同馬の”本質”が顔を出す可能性もあるだろう。

 しかし、そこは競馬界きっての勝負師・武豊騎手の腕の見せどころ。逆にゴールドアクターやサウンズオブアースを完封する「神騎乗」を見せてくれることに期待したい。武騎手にとって、淀は「庭」なのだから。

 果たして、再び京都競馬場に北島三郎の「まつり」がコダマするのか。武騎手も練習しているとのこと、宴の準備は万端である。
(文=利坊)

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