何故「第二の武豊」は誕生しないのか。矢作芳人調教師「改革案」の根底にあるJRA競馬学校の「ドタバタ」方針転換とは

「日本はジョッキーの数を増やしたほうがいいと思う」

 ただ、そういったリスクは矢作調教師も重々承知している。その上で掲げたのが「騎手の増加」という抜本的な改革案だ。

 師は「現状のままでは、(日本人騎手が)毎年複数人が海外に出ていく状況なんて作れるわけがない」と踏まえた上で「そもそも競馬学校の育成システムというか、最初から(入学生を)絞りすぎているような気がする」と指摘。競馬学校の間口を拡大し、もっと騎手を増やすことで”可能性”を底上げすることが、世界に通用する日本人騎手の誕生につながるとした。

「この春で平成が終わりますが、平成元年には東西で223人の騎手がJRAで活躍していました。しかし、現在はJRA所属のルメール騎手やデムーロ騎手を含めても133人と半減しています。競馬人気による時代的な背景もあって、競馬学校の受験者自体が減少傾向にありますが、合格率が5~10%程度というのは、あまりにも狭すぎる門と言えなくもないですね」(競馬記者)

 柴田善臣騎手など1985年に第一期生がデビューしてから、毎年10名を超える新人騎手の誕生も珍しくなかった。だが、昨年は史上最少タイとなるわずか3名……単純な競争力という点を踏まえても「もっと増やした方がいい」という意見はもっともだ。

「現在、競馬学校の生徒が減っているのはJRAが2005年に制度の見直しを行い、保護者の経済的負担が大きく増加したことが挙げられます。

しかし、これで危機感を抱いたのか、一昨年には一転して騎手課程にかかる費用の大部分を無償化。3年間で約260万円が免除されることとなりました。これでまた以前のように競馬学校への志願者が増えると、矢作調教師の希望も少しは叶うと思うのですが……」(同)

「世界で通用するジョッキーを育てるというのは、俺の夢でもある」と、武豊騎手のような世界的名手の誕生を熱望する矢作調教師。ただ、そのためにも「行きつくのはそこしかない」と日本人騎手が育つ”土壌”そのものを改革する必要性を訴えている。

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