元JRA藤田伸二氏「富田は悪くない」因縁の相手にチクリ!? 落馬負傷の松山弘平に理解も……、競馬界のご意見番が指摘した「暗黙の了解」とは

松山弘平騎手 撮影:Ruriko.I

 12日に阪神競馬場で行われた9Rのゆきやなぎ賞(3歳・1勝クラス)は、松田大作騎手の2番人気ボルドグフーシュが勝利した。

 良馬場の芝2400mで前半3ハロン37秒2、1000m通過が62秒3の超スローを8頭立ての最後方からゴボウ抜き。直線だけの瞬発力勝負をメンバー最速となる33秒3で制した切れ味には光るものがあった。

 その一方で、このレースに出走していたハイコーストと松山弘平騎手のコンビは、最内を進んだ最後の直線で進路がなくなる不利を受けただけでなく、落馬負傷のアクシデントに見舞われた。

 パトロール映像を確認したところ、内に1頭分空いたスペースを突こうとした松山騎手だが、左斜め前を走行していた富田暁騎手のゼンノインヴォーグが突然右に移動。幅寄せをする格好となり、行き場を失くしたハイコーストが躓いたようだ。

 これにより松山騎手は頭部外傷と診断され、騎乗予定だった同日阪神の2鞍及び翌13日の中京8鞍も乗り替わっただけではなく、競走中止となったハイコーストも頚椎関節脱臼で予後不良となる残念な結果だった。

 JRAが発表した裁決の結果は、ハイコーストの落馬でその後ろにいたエルデスペラードに影響があったとして、松山騎手に過怠金30000円の処分が下されている。自身が落馬している状況で後ろの馬を気にする余裕などあるはずもなく、ルールとはいえ少々厳しい処分にも感じられたのは気のせいか。

 ただ、この不幸なアクシデントに「加害者」がいたのかとなると話は別だ。

 松山騎手が落馬した直接的な原因は、ゼンノインヴォーグに接触したことではあるものの、同馬に騎乗していた富田騎手に落ち度があったのかとなると疑問が残る。意図的に進路を塞いだ訳でもなく馬がヨレたため、避けようがなかった。

 実際、裁決の処分対象は松山騎手であり、富田騎手に対してはお咎めなしだったこともそれを物語っている。

「これは難しいですよねえ。個人的な意見ですけど確かにあの状況で内が空いていたなら、攻めていい場面にも思えます。外を回して距離のロスをするくらいならイン突きに期待したくなるのもファンの心理です。

馬券を買う立場からすれば、どうしても目先の的中を優先してしまいがちですから。ただ、決まれば鮮やかなイン突きも、一歩間違えれば危険騎乗であることも忘れてはいけないと思わされました」(競馬記者)

 また、この件について警鐘を鳴らしたのが元JRA騎手の藤田伸二氏だ。

 藤田氏は自身のTwitterにて「松山の落馬は、気の毒だが俺に言わせると、あそこは突っ込むべきでは無い」と主張し、「ハナ行ってる馬の暗黙の了解と言うか、はっきり言って入るのが早かったと言うのが原因だ(原文ママ)」と続けた。

 そして、松山騎手としては「もう一呼吸我慢する場所」であり、「富田は悪くない」という見解を披露した。これには藤田氏のツイートを目にしたファンから「さすがプロ目線」「フェアプレー賞受賞騎手だけある」「スッキリしました」など、納得する声も多かった。

 フェアプレーを誇る名手だけに危険な騎乗に否定的なのは勿論のこと、普段から当たりの厳しい岩田康誠騎手がイン突きを得意にしていることも、両者の相性の悪さに全く無関係とはいえないだろう。

 今回の意見も見方によっては、過去に落馬事故の当事者となっている岩田康騎手へのアンチテーゼも含まれているのかもしれない。

(文=高城陽)

<著者プロフィール>
 大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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