今村聖奈、角田大河ら活躍の裏で2年目「0勝」の大苦戦…今年4月に「謎のフリー転向」を遂げた競馬界のサラブレッドの裏事情
10日、中山1Rで嬉しい出来事があった。ホーリーブライト(牝2歳、美浦・竹内正洋厩舎)に騎乗したルーキーの佐藤翔馬騎手がJRA初勝利を挙げたのだ。
今年3月にデビューしたものの、記念すべき第一歩を踏み出すまでに半年以上かかった。同期が次々と勝ち上がる中「正直、焦りはあった」と明かした佐藤騎手にとっては通算122戦目で掴み取った1勝だった。
「同期に少し後れを取ってしまいましたが、新人賞を目指して、ひとつでも多くの勝利を積み重ねていけるように頑張っていきたいと思います」
そう緊張した面持ちで語った佐藤騎手。さすがにここから新人賞は難しいかもしれないが、その意気や良し。今年も残り約3か月、これまでの鬱憤を晴らすような活躍に期待したい。
その一方で、未だ「1勝」が遠い騎手がいる。2年目の大久保友雅騎手だ。
大久保騎手にとって、この日の阪神4Rはまさに勝負レースだった。この日の騎乗がこの1鞍だけというだけでなく、コンビを組んだラガークイン(牝2歳、栗東・大久保龍志厩舎)は3番人気の実力馬。今年、まだ一度も1、2番人気に騎乗していない大久保騎手にとっては「最大のチャンス」と言っても過言ではなかった。
しかし、結果は3着。逃げ切り勝利となった武豊騎手とビーグラッドの影すら踏めない完敗だった。レース後、「これから良くなっていく馬です」と前を向いた大久保騎手だが、ラガークインの「これから」を彼が共に歩めるかは現時点で定かではない。
実際に前回3番人気で3着に敗れたテイエムルンバは、次走で同期の佐々木大輔騎手に乗り替わって1着。現在の大久保騎手の立場は、決して視界良好とは言えないはずだ。
昨年のホープフルSでG1初制覇を飾り、今週のセントライト記念(G2)にドゥラエレーデを送り出す池添学厩舎は、今年も関西リーディング・ベスト10に食い込んでいる実力派である。大久保騎手は、そんな名門の所属騎手として昨年3月にデビューした。
伯父に大久保調教師、祖父にも調教師として三冠馬ナリタブライアンを手掛けた故・大久保正陽さんがいる競馬界の“サラブレッド”でもある。デビュー前の期待度は、同じく身内に競馬関係者がいる同期の今村聖奈騎手や角田大河騎手らに勝るとも劣らなかったはずだ。
しかし、大久保騎手は初勝利が5月と出遅れると、デビュー初年度は3勝止まり。今村騎手や角田河騎手らがブレイクを果たす中、今年もここまで0勝と早くも騎手人生の崖っぷちに立たされている。
「謎のフリー転向」を遂げた競馬界のサラブレッドの裏事情
そんな中で、追い打ちをかけたのが今年4月に発表された“謎”のフリー転向だ。
皐月賞(G1)の3日後の4月19日、JRAは大久保騎手がフリーになることを発表した。デビューから、わずか1年はもちろん同期最速。それも今年の勝ち星がない中での独立は「異例」と言っていいだろう。
「ファンはもちろんですが、これにはマスコミ関係者も少しザワつきました。無謀と言わざるを得ないフリー転向でしたし、ネット上でも大久保騎手だけでなく、師匠の池添学調教師の判断にも疑問の声が少なからずありましたね。
ただ実は、昨夏に大久保騎手が騎乗を自粛した時期がありました。完全に乗らなかったわけではないですが、その原因がどうやら素行不良のようで……。今回のフリー転向は見捨てられたと言っても過言ではない形ですが、反省はしていたものの本人の方にも問題があったようです」(競馬記者)
一方で大久保騎手にとって、今年はショックなことが相次いだ。年明け早々の1月21日に祖父の大久保正陽さんが誤嚥性肺炎のために死去。さらに2月には、池添兼雄調教師が定年により引退している。
池添兼調教師は池添学調教師の父に当たるが、大久保騎手が初勝利を挙げた際に「池添学厩舎所属として池添兼雄先生にも大変お世話になっている」と感謝を語ったように、第2の師匠のような存在だった。単純に騎乗依頼を失った以上の影響があったに違いない。
そして、その約2か月後には大きな環境の変化となるフリー転向。2年目の19歳にとっては、競馬に集中することが難しい過酷な状況だったはずだ。
「実は大久保騎手がフリーに転向した後、池添学厩舎の騎乗はゼロ。当人同士の問題なので、周りがとやかく言うことではありませんが、まだ2年目のジョッキーがこうして崖っぷちに立たされていることは何とも残念です」(同)
一方で、池添兼調教師の弟子だった松山弘平騎手はこの日の京成杯オータムH(G3)を勝利し、逆転でサマージョッキーズシリーズの王者にも輝いた。偉大な父に倣い、池添学調教師にも弟子を救う手を差し伸べてほしいところだが……。
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