Dr.コパが明かしたコパノキッキング、マイル挑戦「NO」の舞台裏。O.マーフィー騎手「1年越しの思い」と世界制覇の野望
「NO――」
昨年の根岸S(G3)。フェブラリーS(G1)の前哨戦を快勝したコパノキッキングだったが、次走のマイル挑戦に対して、鞍上のO.マーフィー騎手は、そうはっきりと答えた。
結果は5着。乗り替わった藤田菜七子騎手にとってはG1初挑戦ということもあり、大きな注目を浴びたが、勝ったインティには5馬身以上離された。ただ、逃げ切ったインティも含め、上位勢は軒並み好位組。4コーナー後方13番手から追い上げたコパノキッキングを、力負けと判断するのは早計だろう。
ちなみに10番手から7着まで追い上げたサンライズノヴァは、後の南部杯(G1)の勝ち馬。他の後方組はすべて10着以下に敗れている。
これだけを見ても5着まで追い上げたコパノキッキングにとって、マイル戦が「NO」なのかは微妙なところだ。スプリント戦の圧倒的なパフォーマンスを鑑みれば、少なくともベストとは言えないかもしれないが、それが「=フェブラリーSを勝てない」とは限らない。
果たして昨年、何故マーフィー騎手はあれだけはっきりと「ノー」を突きつけたのか。コパノキッキングのオーナーDr.コパこと、小林祥晃氏から興味深い“裏話”が聞けた。
「マーフィーが、どうしてもドバイ(ゴーデンシャヒーン、G1・ダート1200m)で乗りたいって言ってるんだ。『ドバイに行こう!勝てる』って」
そう小林オーナーが振り返ったのは、昨年の根岸S快勝後だ。短期免許最後の1週で初コンビを組んだマーフィー騎手は、コパノキッキングの走りの“ベタ惚れ”。見据えたのは、世界の舞台だった。
「『ダート1200だったら世界一になれる』って言うんだよ。俺も正直、揺らいだ。菜七子(騎手)でフェブラリーSに行くか、マーフィーとドバイへ行くか。夢なのか、金なのか(笑)」
小林オーナーが語った「夢」とは、JRA唯一の女性騎手であり、親交も深い藤田菜七子騎手と共にG1で歴史的勝利を上げること。「金」とは、当然ドバイゴーデンシャヒーンの超高額賞金だ。1着200万ドル(約2億2000万円、1ドル=110円換算)は、日本のJBCスプリント(G1、1着6000万円)の3倍以上になる。
昨年は、結果的に藤田菜七子騎手とフェブラリーSに向かい「夢」を選んだ小林オーナー。しかし、あれから一年。マーフィー騎手の熱い思いは消えていないようだ。
「先週、俺の友達がマーフィーとメシ食ったんだ。そしたら『コパさんに、ドバイに行こうって伝えてくれないか』って言われた。俺は『検討中~』って返したけどね(笑)」
果たして、マーフィー騎手の1年越しの思いは叶うのか。根岸S後は昨年同様、フェブラリーS出走が予定されているコパノキッキングだが、結果によっては日の丸を背負っての世界挑戦があるかもしれない。