JRA「逃亡劇」に終止符!マルターズアポジー「あの騎手」とラストラン!
「サイレンススズカ、タップダンスシチー、ツインターボ……」これまで様々な逃げ馬が、その時代ごとに競馬を盛り上げてきた。
現代の「逃亡者」マルターズアポジー(牡8歳、美浦・堀井雅広厩舎)のラストランが、3月1日の中山記念(G2)と発表された。時代を彩った逃げ馬がターフを去ることになる。
マルターズアポジーはデビューから一貫して逃げを貫いてきた「生粋の逃げ馬」である。15年2月の中山芝2000mの新馬戦でデビュー。3馬身差の勝利で華々しく競走生活のスタートを切った。同年7月、ラジオNIKKEI賞(G3)では3着に入り、能力の高さを感じさせるも、なかなか条件戦を抜け出せなかった。
4歳になり転機を迎える。7月に福島競馬場で1000万条件を勝つと、10月に中山で1600万条件を連勝で制した。ついに11月、福島記念(G3)で久々の重賞挑戦となる。レースは7番人気の低評価ながら、ゼーヴィントをはじめとした人気の3歳馬を抑え、見事逃げ切り勝ち。初の重賞制覇となった。
その後、初のG1・有馬記念は惨敗するも、小倉大賞典(G3)を4番人気で、関屋記念(G3)を7番人気で制して、重賞3勝を挙げた。オープン入り後、3番人気以内に推されたレースは、すべて馬券圏外と人気の裏切り方も印象的な馬だ。マルターズアポジーが直線で沈む姿を見て、ため息をついたファンも多いだろう。
このようにして、マイル~中距離の重賞戦線は、マルターズアポジーがハナを切ると世間に浸透していった。
しかし、昨年7歳シーズン初戦の小倉大賞典(G3)はスタート出遅れ、32戦目にして初めて先頭という「指定席」を譲ることになった。その後はダート転向や短距離路線と試行錯誤したが、結果を出すことができなかった。そして、今回の引退発表に至る。
引退レースの鞍上は武士沢友治騎手だ。マルターズアポジーの39戦のうち21戦手綱をとった最愛のパートナーだ。マルターズアポジーの重賞勝ちは、すべて同騎手の手綱さばきによるもの。
また武士沢騎手はこれまで挙げた重賞5勝のうち、3勝はマルターズアポジーで制したもの。まさに相思相愛の誰もが認めるベストカップルである。
最後の「愛の逃避行」の舞台・中山記念は5年前にマルターズアポジーが新馬戦を勝利した中山競馬場で行われる。
最後の逃亡劇は「指定席」を譲らず、無事にゴールすることを祈る。