JRAヴェロックス中内田厩舎「狙い通り」のハンデ57kg!? 「異例」小倉大賞典(G3)出走の「裏」に隠された戦略
23日(日)小倉競馬場で小倉大賞典(G3)が開催される。今年最初のG1・フェブラリーSの裏開催となるが、昨年のクラシックを沸かせたヴェロックス(牡4歳、栗東・中内田充正厩舎)が出走することで注目度が増している。
昨年は1月に若駒S(L)、3月に若葉S(L)と連勝し、クラシックへ駒を進めた。皐月賞(G1)は「サートゥルナーリア」の2着。日本ダービー(G1)は皐月賞馬に先着するも、「ロジャーバローズ、ダノンキングリー」に敗れ3着。菊花賞(G1)トライアルの神戸新聞杯(G2)はまたしても「サートゥルナーリア」の2着に敗れる。
迎えたクラシック最終戦・菊花賞では、クラシックで先着を許した3頭がおらず、1番人気に支持された。しかし、若葉Sと神戸新聞杯で2度負かした相手ワールドプレミアの3着に敗れる。そして続く有馬記念(G1)は8着に沈んだ。
「菊花賞はジャスタウェイ産駒の距離不安が影響した結果ですね。有馬記念(G1)は古馬初対戦、疲れもあっての凡走ではないでしょうか。陣営としては勝ちから1年近く遠ざかっているため、取得賞金の加算に加えて、勝ち癖をつけるため『あえて』小倉大賞典を選んだのかもしれません」(競馬記者)
春のG1に向けたステップレースとしては、京都記念(G2)、中山記念(G2)、金鯱賞(G2)がスタンダードだ。それだけにヴェロックスの小倉大賞典参戦は驚きである。過去に小倉大賞典を制したのち、G1を勝ったのはサイレンススズカまで22年間遡ることになる。また小倉大賞典はハンデ戦のため、ステップレースとしては異例の選択だ。
「今回ヴェロックスのハンデはカデナと並んで、トップハンデの57kgを背負う。カデナは重賞ウィナーだが、G1では全く歯が立っていない。ヴェロックスはG1で好走しながらも、重賞未勝利という点で、同じハンデなのかもしれない。このハンデはヴェロックスにとって負けられない好条件だ」(競馬記者)
王道のステップレースを外して、「メンバーの層が厚くなく、ハンデが重くなりすぎない」小倉大賞典の選択は、中内田厩舎の手腕が光る選択である。
「ハンデが重くなりすぎない」裏付けには、陣営の奇策も活きている。通常、ハンデは特別登録確定後にしかわからないのだが、事前にヴェロックスをハンデ重賞シルクロードS(G3)に登録して、ハンデの目安を計っていた。今回のハンデもシルクロードSと同じ57kg、その点も中内田厩舎の戦略が功を奏した形だ。
そして今回は主戦の川田将雅騎手が、フェブラリーSに出走予定のお手馬がいないという偶然もあってなせる業だ。
また父ジャスタウェイが本格化したのは、4歳シーズン。今年4歳のヴェロックスも更なる活躍に期待がかかる。新馬戦を勝った舞台の小倉で、悲願のG1獲りに向けたステップとなるか。
G1が開催される府中から遠く離れた小倉で、ヴェロックスが「復活」を賭けて「負けられない戦い」に出走する。