JRA春G1「波乱」の立役者が無念の引退。「記録より記憶」オルフェーヴル、ゴールドシップにはないステイゴールド産駒らしさでファンを魅了
27日、今年の天皇賞・春(G1)で2着のスティッフェリオ(牡6歳、栗東・音無秀孝厩舎)が引退することが明らかになった。放牧先の社台ファームにて検査を行ったところ、屈腱炎を発症していることが発覚したための引退と、同馬を所有する社台サラブレッドクラブが発表している。
これまでに2018年の福島記念(G3)、19年の小倉大賞典(G3)、オールカマー(G2)で重賞3勝を挙げているスティッフェリオ。重賞では一度も1番人気に支持されたことがなく、予想外の好走でファンを驚かせてきた。
今年の日経賞(G2)では9番人気ながら3着、天皇賞・春(G1)では11番人気で2着に入るという大波乱を起こした。ゴール前で連覇を目論むフィエールマンに、わずか「ハナ差」交わされてしまい初のG1制覇を逃すも、このレースがきっかけで多くのファンの記憶に残る馬となったのではないだろうか。
父ステイゴールドは現役時代に“まじめに走っていない”と言われたほどのくせ者。初のG1制覇は引退レースの香港ヴァーズ(G1)で滑り込みの勝利だったが、01年のドバイシーマC(当時G2)ではゴドルフィンの名馬ファンタスティックライトから大金星をあげている。このレースはステイゴールドの能力の高さを証明するには十分な内容だ。
レース中に他の馬を噛みつきにいくという気性の荒さも有名で、3歳秋に一度騎乗した武豊騎手は「外から併せてきた馬にガーッと噛みつきに行きました。競走に集中できていない馬でした」と語っている。ステイゴールドの父サンデーサイレンスも、現役時代にレース中ライバル馬に噛みつこうとしたという逸話があるため、その血が色濃く引き継がれているのだろう。
また種牡馬としても、父と同じく“暴れん坊”オルフェーヴル、ゴールドシップという2頭の大物を輩出。まさにステイゴールド産駒といったところだ。
その一方、スティッフェリオはどちらかというと“優等生”タイプだったが、ステイゴールドの血を色濃く継いでいる側面を持っている。
実はステイゴールドも1998年の天皇賞・春で10番人気の低評価を覆して2着に入っているのだ。それ以外にも、同年の有馬記念(G1)で3着(11番人気)、99年の天皇賞・秋(G1)で2着(12番人気)と人気薄での激走が目立った馬である。スティッフェリオも人気薄で波乱を起こすところは父親譲りと言えるだろう。
ステイゴールドは6歳でドバイシーマC、7歳で香港ヴァーズを制しているように晩成だった。今年、6歳シーズンのスティッフェリオが波乱の立役者となっていることから、まだまだ今後の活躍に期待されていただけに、引退は残念で仕方ない。
志半ばでの引退となったが、充実した第2の馬生を過ごしてほしいものだ。