JRA“6億円馬”ディナシー「セレクトセール最高落札馬は走らない」負の格言代表的存在が繁殖牝馬セールへ
10月27日(火)に北海道苫小牧市のノーザンホースパークで開催予定である「ノーザンファーム繁殖牝馬セール」の上場馬リストが公開された。そこに“6億円馬”ディナシーの名前があり、一部の競馬ファンをざわつかせている。
これまでノーザンファームは、株式会社ジェイエスが行う繁殖馬セールに繁殖牝馬を上場させていたものの、頭数が多くなりすぎたなどの理由で、2019年から自社での開催を決定。昨年はプリメラビスタ(未供用、4歳、父オルフェーヴル、母ビワハイジ)が6200万円で落札され、ロードカナロアを受胎したアスティル(5歳、父ステイゴールド、母ヒストリックスター)が、受胎馬の最高価格3700万円で競り落とされていた。
そこに出されることになったディナシーは、父キングカメハメハ、母トゥザヴィクトリーの組み合わせで誕生。絵に描いたような良血馬として注目を集めた同馬は、06年のセレクトセールでグローブエクワインマネージメント(有)が、当時の史上最高額となる6億円で落札していた。
だが、デビュー前に放牧地で落雷に遭遇。致命傷を負ってしまい、一度も走ることなく無念の繁殖牝馬入り。その後、ディナシーは、初仔のヴェルデホ(父シンボリクリスエス)、アルーシュ(父チチカステナンゴ)、ミッキーディナシー(父ハービンジャー)、ピラータ(父クロフネ)ら7頭を輩出したものの、産駒が挙げた全勝利は現在までで4勝。有望な産駒を送り出せないでいた。
「未出走のうえに産駒の成績も振るわないため、ディナシーはすっかり『セレクトセール高額落札馬は走らない』という格言めいたものの代表的な存在になってしまいました。
今年デビューしたメイサウザンアワーは、7月の福島新馬戦で戸崎圭太騎手を背に2着と好走。勝利こそなりませんでしたが、久々に面白い産駒が出たと思っていたのですが……。売却されるということはノーザンファーム的に“タイムリミット”だと判断されたのでしょうね。いくらの値がつけられるのかも注目です」(競馬誌ライター)
だが、ノーザンファームも含まれる社台グループから見限られたとはいえ、ディナシーもこれで終わったわけではない。社台グループはかつて、今年無敗の2冠馬に輝いたデアリングタクトの母馬デアリングバードを繁殖牝馬セールで売却し、またジャングルポケットが日本ダービー(G1)を勝利する前に母馬ダンスチャーマーを他牧場に売却したなど、“失敗の前例”もあるためだ。
今年デビューしたメイサウザンアワー、または受胎しているマキシマムセキュリティの父でもあるニューイヤーズデーとの産駒が、ノーザンファーム関係者たちの鼻を明かす未来が訪れる可能性もある。ディナシーの巻き返しに期待したい。