JRA藤沢和雄「12年前」のリベンジへ。レース当日、無念の取消……。ラストイヤーのアメリカ遠征で「苦い記憶」を払拭できるか

 8月2日の新馬戦を7馬身差で圧勝したバニシングポイント(牡2歳、美浦・藤沢和雄厩舎)が来年に米国遠征を予定していることが明らかになった。

 父タピット、母アンライヴァルドベルの米国産馬であるバニシングポイント。母と全姉のユニークベラはアメリカでG1を勝っているダート界の良血馬だ。昨年、キーンランドのセプテンバーイヤリングセールで長谷川祐司オーナーが150万ドル(約1億6000万円)で落札。これは現地メディア『bloodhorse.com』でも報じられるほど話題になった。

「全姉のユニークベラはG1・3勝の名牝なので、日本人がその弟を購入したことが話題になるのも納得ですね。長谷川オーナーは『ケンタッキーダービー(G1)を目指す』と話してますし、藤沢和調教師もそれに向けて計画を立てており、かなり意欲的です」(競馬記者)

 次走は芝レースのアイビーS(L)で2勝目を目指すことになるが、血統的にダートならさらに期待出来るかもしれない。2016年に米3冠レースに挑戦したラニも同じタピット産駒。母系を考えれば、ダートでこそ真価を発揮する可能性すらある。

 22年2月に引退予定の藤沢和調教師にとって、バニシングポイントは最後のアメリカ遠征となるかもしれない。きっと、並々ならぬ気合が入っているはずだ。

 藤沢和調教師の米3冠挑戦といえば、08年のカジノドライブが思い出される。

 半兄のジャジルはベルモントS(G1)勝ち馬、半姉のラグズトゥリッチズはベルモントSとケンタッキーオークス(G1)勝ち馬という超良血のカジノドライブ。こちらも06年のキーンランドのセプテンバーセールにて、95万ドルで落札され、日本に輸入された。

 藤沢和厩舎に入厩し、3歳2月にデビューを迎える。その初戦で大差勝ちを収め、勝ちっぷりと血統背景からベルモントS挑戦を期待する声が上がった。山本英俊オーナーはそれに応えて米国遠征を決断。前哨戦にピーターパンS(G2)を挟み、ベルモントSへ向かうことになった。

 遠征初戦のピーターパンSは2着に5馬身3/4差をつける圧勝。カジノドライブは母国アメリカでも高いパフォーマンスを見せ、兄姉に続いてベルモントS制覇に大きく前進した。当時、アメリカ国内でもベルモントSで実現する2冠馬ビッグブラウンとカジノドライブの対決に注目が集まった。

 しかし、本番の前日に左後脚に挫石を発症。当日朝に大事をとって、無念の出走取り消しとなった。馬を大事にする藤沢和調教師らしい判断と言えるだろう。

 あれから12年が経ち、藤沢和調教師はバニシングポイントで米3冠競走のケンタッキーダービーに挑戦しようとしている。カジノドライブで味わった悔しさを晴らすラストチャンスとなるだろう。

 来年、名伯楽がアメリカで大輪を咲かすことに期待したい。

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