JRA武豊は「真っ向勝負」すら許されない!? 凱旋門賞(G1)悲願達成の障害は、エネイブルら「2強」以外に「世界の名門厩舎」A.オブライエンの“圧力”か
「夢に向かって行ってまいります」
10月4日、フランスのパリロンシャン競馬場で世界最高峰のレース・凱旋門賞(G1)が開催される。3年連続9度目の挑戦となる武豊騎手が日本から“夢”を叶えるために参戦する。
今年はコロナ禍の影響で帰国後に2週間の自主隔離をしなければならない。その影響で秋華賞(G1)までの期間は実質的に騎乗停止になる。それでも、フランスに渡航する価値があると考えているほど、凱旋門賞制覇はレジェンドにとっても悲願だ。
自身のホームページの日記で「相手は強いですが、番狂わせを演じてくるつもりで行ってきます」と意気込みを語っていることからも、熱の入れようが伝わってくる。
武豊騎手が騎乗を予定しているジャパン(牡4歳、愛・A.オブライエン厩舎)は、昨年の凱旋門賞で4着に入った世界屈指の実力馬。日本の馬主・キーファーズが「武豊で凱旋門賞制覇」を目指し、クールモアグループと共同所有した馬である。今回、キーファーズの意向が尊重され、武豊騎手での参戦が実現したというわけだ。
過去の凱旋門賞で武豊騎手の最高着順は、フランス調教馬サガシティで挑んだ2001年の3着。実は、ジャパンはサガシティの甥にあたるという不思議な縁もあり、武豊騎手を後押しするかもしれない。今年こそは悲願達成に期待がかかる。
だが、武豊騎手の凱旋門賞制覇は容易なものではなく、真っ向勝負すらできない恐れもあるかもしれない。
まず、制覇を阻むのはエネイブルとラブという強敵の存在だ。史上初の凱旋門賞3勝を狙う最強牝馬と英オークス(G1)を9馬身差で圧勝したG1・3連勝中の3歳牝馬は強力なライバルとなるだろう。
しかし、それ以上にやっかいになりそうなのが、ジャパンがA.オブライエン厩舎の所属馬という点だ。
16年の凱旋門賞はA.オブライエン厩舎のファウンドが優勝。さらに2着にハイランドリール、3着にオーダーオブセントジョージと、同厩舎の管理馬が上位を独占した。この結果の裏には、“チームプレー”が存在したことを見逃せない。
「この年の凱旋門賞はA.オブライエン厩舎としては、ファウンドが大本命でした。陣営としてはいかに同馬を優勝させるかということにこだわっていたか、レースからも読み解けます。
12番枠から発走したファウンドはスタート直後、即座にインコースに舵を切っています。普通であれば出たなりの位置で運ぶところですが、わざわざインコースを取りにいったのには理由があります。
それはレース当日に内柵を撤去することで内ラチ沿いに”グリーンベルト”が現れること。ただ、無理に内を走っても、包まれるリスクが残ります。その課題を解決したのが“チームプレー”です。
同厩のハイランドリールとオーダーオブセントジョージが先行して、ファウンドの進路を確保。その後方を走ったファウンドは内々で脚を溜めることができ、最後の直線は鋭く伸びて優勝を飾りました。ファウンドの勝利と同時に、A.オブライエン厩舎の勝利とも呼べる内容でしたね」(競馬記者)