JRA川田将雅「この子は何も悪くない」スプリンターズS(G1)あの「悲劇」の涙から10年。師匠・安田隆行調教師に送る「感謝」のG1勝利へ

 58.5㎏のトップハンデ。決して状況は楽ではなかったはずだ。しかし、この日の川田騎手は冷静であった。スタートからじっくりと後方で脚を溜めると、直線ではスムーズに外へ持ち出し見事勝利をもぎ取った。

 レース後、川田騎手は安堵の気持ちからか、感極まって涙した。

「この子は何も悪くない。僕が下手なばかりに申し訳ないことをした。今は、ありがとうと言いたい」と馬を労う感謝の気持ちを口にした。

 その後、リーディング上位の騎手へと成長を遂げた川田騎手。ファインニードルで高松宮記念、スプリンターズSを春秋連覇するなど、スプリントG1でも快挙を成し遂げている。川田騎手の心の中には、きっとダッシャーゴーゴーやその関係者、師匠・安田隆行調教師への感謝の気持ちもあっただろう。

 そんな成長を遂げた川田騎手が、今回のスプリンターズSで手綱を握るのがダノンスマッシュ(牡5歳、栗東・安田隆行厩舎)だ。

 ダッシャーゴーゴー以降、カレンチャン、ロードカナロアでスプリント界を席巻した安田調教師。ただ、その背中には川田騎手の姿はなかった。

「悲劇」のスプリンターズSから約10年。

 あの時と同じ安田調教師がダノンスマッシュに川田騎手を乗せ続けるのも、あの時の記憶がまだ残っているのではないだろうか。

 師弟コンビで挑むスプリンターズS。

「いまの将雅なら……」

 そんな気持ちが、安田調教師にはあるのかもしれない。

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