JRA「質より量」VS「量より質」のリーディング争い……。“463”と“238”が物語る「正反対」な矢作厩舎と友道厩舎
今年の中央競馬開催も残り4週間。先週のジャパンC(G1)に例えるなら、直線残り200m地点に差し掛かったあたりだ。そこで、現時点の調教師リーディング争いに注目してみた。
11月29日(日)終了時点の数字をおさらいすると、51勝でトップに立つのが矢作芳人厩舎。そして、それを2勝差で追うのが友道康夫厩舎だ。3位の堀宣行厩舎は、矢作厩舎に7勝差つけられており、残り4週間での逆転は非現実的。矢作厩舎と友道厩舎の一騎打ちの様相を呈している。
【調教師リーディングTOP3、11月29日終了時点】
1位 矢作芳人 51勝
2位 友道康夫 49勝
3位 堀宣行 44勝
栗東の名門2厩舎の動向を年初から改めて振り返ってみる。1月は矢作厩舎が2勝、友道厩舎は4勝と、ともにやや立ち遅れ気味だった。二の脚を使ったのは矢作厩舎のほうで、2月に8勝。一方の友道厩舎は2月こそ3勝に終わったが、3月に10勝の固め打ちを見せ、すぐに盛り返しに成功した。
5月末の「春競馬」終了時点では、矢作厩舎が26勝でリーディングトップ。友道厩舎は25勝で、この時点で既にデッドヒート状態。しかし、6月から9月上旬の「夏競馬」で、矢作厩舎が引き離しにかかる。
矢作厩舎は北海道(札幌・函館)で7勝を挙げるなど、夏競馬で勝ち鞍を量産。一方の友道厩舎は北海道で3勝に終わるなど、「夏競馬」では矢作厩舎の16勝に対し、友道厩舎は10勝。この時点で両者の差は7勝に広がっていた。競馬に例えるなら、向正面から3~4コーナーにかけて、矢作厩舎が引き離した形だ。
しかし、友道厩舎も負けていない。秋競馬を迎えると、その差を徐々に詰めていく。ワンテンポ遅れてスパートをかけたのは“4コーナー過ぎ”。11月に7勝を挙げ、同月3勝に終わった矢作厩舎に一気に詰め寄った。
そして2勝差で迎えた残り4週間。4年ぶり3度目のリーディングトレーナーを狙う矢作厩舎に並びかけようとする友道厩舎は初リーディングが懸かる。最終週まで両厩舎の激しい叩き合いが見られそうだが、触れておきたいのが全く異なる厩舎の方針である。
ご存じの通り、矢作厩舎はとにかくレース数をこなす。今年の所有馬ののべ出走回数は「463」。これは次点の清水久詞厩舎の「374」を大きく上回っている。時には連闘も厭わぬ、ハードなローテーションを多用する。自らが「連闘は一番得意なローテーション」と語るほどだ。
一方、友道厩舎ののべ出走回数は「238」。矢作厩舎の「463」に比べると、かなり少なく感じるが、これでも平均的な数字だ。ただし、勝率は矢作厩舎の11.0%に対して、友道厩舎は20.6%。矢作厩舎とは対照的に、狙ったレースを確実に勝ちに行くスタイルだ。
両厩舎の違いはローテーションだけではない。矢作厩舎は芝で36勝、ダートで15勝と、芝・ダート問わず、勝ち鞍は挙げている。一方の友道厩舎は、かなり特徴的だ。今年挙げた49勝のうち、なんと48勝が芝コースでのもの。ダートの勝ち鞍は1つだけである。管理馬の性質も関係しているが、そもそもダートのレースに使うこと自体が少なく、今年は18鞍という徹底ぶりだ。
とにかく数を使う矢作厩舎と、一戦必勝型で芝レースを狙い打ちする友道厩舎。残り1か月を切ったデッドヒートの行方はどうなるだろうか。