JRA武豊は隠れた勝ち組「消えた68勝」はどこへ? “コロナの功名”に笑うのはC.ルメール、川田将雅ではなく……
今年を象徴する漢字一文字が「密」となるなど、新型コロナウイルスの影響を多分に受けた2020年。一度も開催を止めることなくゴールインしようとしている競馬界であっても、競馬場の観客動員に制限が掛かるなど、その影響は決して小さくはない。
だがその一方、海外遠征が困難になったことで、国内G1レースの出走メンバーは充実。特にアーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトの三冠馬3頭が激突したジャパンCは歴史に残る名勝負として、競馬界の枠を超えた注目を集めた。
また海外との交流が厳しくなったことで、大きな恩恵を受けたのがJRA所属のジョッキーたちだ。
というのも例年の競馬界は国際化が進み、短期免許を取得した世界各国のトップジョッキーたちが挙ってJRAへ参戦。ノーザンファームを始めとした日本競馬の“外国人騎手崇拝主義”も然ることながら、世界トップクラスの賞金額を誇る日本は、外国人騎手たちにとっても非常に美味しい稼ぎどころなのである。
中でも欧州競馬はオフシーズンを迎える「秋競馬」は、外国人騎手の参戦が最盛期を迎える。
特に昨年はO.マーフィー騎手、C.スミヨン騎手、A.シュタルケ騎手、R.ムーア騎手、W.ビュイック騎手に加えて、世界のL.デットーリ騎手まで参戦。ジャパンC(G1)のレース史上初の外国馬ゼロが大きな話題となった一方、外国人ジョッキーは非常に国際色豊かだった。
しかし、今年は打って変わって新型コロナウイルスの影響で、今秋の外国人騎手の参戦はゼロ。やや寂しい面は否めないが、彼ら6人が10月から年末までに挙げた「合計68勝」は、必然的にJRA所属騎手たちの手に渡ることとなる。
述べるまでもなく、68勝という勝ち星は決して小さなものではない。これだけの“お宝”を一体、誰が山分けにしているのか――。今秋のトップジョッキーたちの現状を踏まえると、はっきりと明暗が分かれているから驚きだ。
まず最初に考察しなければならないのは当然、今年もリーディングを独走しているC.ルメール騎手だろう。
昨秋の10月から年末までに49勝を積み上げ、外国人騎手たちの参戦を物ともせずに3年連続のリーディングに輝いたルメール騎手。今秋はスプリンターズS(G1)、天皇賞・秋(G1)、エリザベス女王杯(G1)、マイルCS(G1)、ジャパンC(G1)を制し、まさに“ルメール無双”といった状況だが、こと同時期の勝ち星に至っては53勝と大きな上積みがないのは意外だ。
それも昨年は10月頭にフィエールマンと凱旋門賞(仏G1)に参戦。現在の4勝アップは、その分と言えなくもないだろう。勝利も0.268から0.269と完全な横ばい。つまり元々、来日してくる外国人騎手よりもさらに上の序列にいるルメール騎手にとって怪我の功名ならぬ“コロナの功名”は「薄い」と言えるのではないだろうか。
同様の傾向は、リーディング2位の川田将雅騎手にも言えそうだ。
昨年10月から年末までに31勝を積み上げた川田騎手だが、今年はここまで29勝。あと2週間残っているので多少の上積みはありそうだが、勝利も0.238から0.252と若干のアップに留まっている。川田騎手も今や、来日する世界の名手たちと同等以上の評価を得ているということなのだろう。
一方、明らかに恩恵を受けていそうなのが、今年無敗の三冠を成し遂げた2人だ。