JRA有馬記念(G1)「競走中止」に称賛の嵐!? 史上最年少関東リーディング獲得で横山武史、“ポスト武豊”にまっしぐら!
27日、JRAの今年のフィナーレを飾ったグランプリ、有馬記念(G1)は1番人気のクロノジェネシスが快勝。春秋グランプリ制覇という偉業を達成し、コロナ禍に揺れた1年を締めくくった。
そのグランプリレースで唯一完走できなかったのがブラストワンピースだ。道中は2番手の好位を進み、勝機をうかがったが、向正面でズルズル後退。3角では急減速し、後方3番手まで下がってしまう。そして直線に入ったところで、鞍上の横山武史騎手が下馬し、無念の競走中止でレースを終えた。
その後、JRAは心房細動による競走中止だったと発表。大きな故障ではなかったことに胸をなでおろしたファンも多かっただろう。
「9番人気とはいえ、ブラストワンピースの馬券を買っていたファンの心中は複雑だったでしょう。ただ有馬記念という大舞台で下馬する覚悟を決めた横山武騎手には拍手を送りたいと思います。
レース中に心房細動を発症することは時折あって、減速したままゴールにたどり着くことも珍しくありません。横山武騎手の判断には賛否ありましたが、そのほとんどが称賛の声でした」(競馬記者)
「よく止めてくれた」
「的確な判断ありがとう」
「父譲りの観察力ですね」
グランプリ初騎乗にもかかわらず、平常心を失わず、冷静な判断を下したことは褒められてしかるべきだろう。JRAは、この日で全開催を終え、横山武騎手の関東リーディングが確定。22歳での獲得は、郷原洋行元騎手の23歳(1967年)を抜く史上最年少記録となった。
最後は中堅の吉田隼人騎手とデッドヒートを演じ、最終的には3勝差をつけ、まさに充実の1年を終えた。そんな横山武騎手の転機となったのが、重賞18度目の挑戦でウインマリリンを勝利に導いた4月のフローラS(G2)だろう。その後はノーザン系の馬への騎乗依頼が急増した。
波に乗った横山武騎手は、夏の北海道開催で35勝の固め打ちを見せ、年間100勝も視界に入れていた。ところが秋競馬に入ると、やや成績を落としてしまう。その要因について別の記者は次のように話してくれた。
「以前は『マイネル軍団』の馬を中心に騎乗していましたが、フローラSを勝った直後からノーザン系の馬に騎乗する機会が増え、おのずと成績はアップすると思われました。ところが、ノーザン系の有力馬でなかなか結果を出せずにいました。
横山武騎手の持ち味は早めに動いて、脚を使い切る競馬。持続力やスタミナに秀でた馬が多い『マイネル軍団』にはピッタリですが、瞬発力自慢が目立つノーザン系の馬は、イマイチ合っていなかったのでしょう」(別の競馬記者)
その相性の悪さは数字にも表れていた。9~11月は、ノーザンファーム生産馬に騎乗した時の勝率は17.0%。騎乗した馬の質を鑑みるとあまり褒められたものではない。しかし、12月に入ると、コツをつかんだのか、29.4%と勝率を大きく伸ばし、アピールに成功。
有馬記念で騎乗依頼があったことは、横山武騎手を高く評価している証拠だろう。関東の若手代表格として、“ポスト武豊”の有力候補に名乗りを上げるためにも、来年は100勝達成に期待がかかる。