JRAディープインパクトの「100億円」移籍オファー激白! 金子真人オーナー×世界のゴドルフィン……2006年にあった”神々”の話

エネイブル 競馬つらつらより

 先日、フランケルやエネイブルのオーナーで、世界の大レースを勝ちまくったサウジアラビアのハーリド・アブドゥラ殿下が亡くなったニュースが世界中を駆け巡った。

 欧州だけでなく、日本で種牡馬として活躍したダンシングブレーヴやコマンダーインチーフのオーナーとしても知られるアブドゥラ殿下。昨年には愛2000ギニー(G1)を制したシスキンが日本に輸入され、今年から社台スタリオンステーションで種付けを開始することは記憶に新しい。

 そんなアブドゥラ殿下と長年、世界の競馬の覇権を懸けて争ったのが、ドバイのシェイク・モハメド殿下が率いるゴドルフィンだ。昨年のエクリプスS(G1)にガイヤースを送り込み、アブドゥラ殿下のエネイブルを破ったことは世界に衝撃を与えた。

 また、ゴドルフィンも日本競馬に大きく関係している。2004年にはダーレー・ジャパン・ファームを設立し、日本で馬主資格を取得。ファインニードルやタワーオブロンドンといった日本のG1勝ち馬を輩出するなど、日本との「関係性」という点では亡くなったアブドゥラ殿下以上と言えるだろう。

 そんな中でも日本の競馬ファンに世界、そしてゴドルフィンを強く意識させたのは2006年にあったユートピアの移籍騒動ではないだろうか。

 同年3月に日本調教馬初のゴドルフィンマイル(G2)制覇を成し遂げたユートピア。そのパフォーマンスに惚れ込んだのがモハメド殿下だった。日本競馬ではまずお目に掛かれない、現役馬に対する電撃オファー。移籍金は日本のG1・4勝分に値する約4億円だったという。

 ちなみにこのオファーを受けたのは、日本の個人馬主としては伝説級の成功を収めている金子真人オーナーだった。だが、実はユートピアの移籍話は両者の交渉では“序の口”だったというから驚きだ。

「100億というオファーがあったが、外国に売る気はなかった」

 一昨年に他界したディープインパクト、キングカメハメハの追悼のために制作された『ジャパンサイアー、世界を翔ける。ディープインパクトとキングカメハメハが日本競馬に遺したもの』で金子オーナーがそう語ったのは、ユートピアを売却した数か月後の出来事についてだった。

ディープインパクト JBISサーチより

 詳細はぜひ本作品を視聴いただきたいが、当時の金子オーナーは無敗の三冠に加え天皇賞・春(G1)と宝塚記念(G1)を連勝し、いよいよ日本競馬を代表して世界に打って出ようとするディープインパクトを所有していた。

 その「近代競馬の結晶」に目を付けたのがゴドルフィンだ。オファーした移籍金の額は55億円、さらにディープインパクトがフランスの凱旋門賞(G1)を勝てば100億円で買い取るというのだから、話のスケールがあまりにも大きい。

 しかし、金子オーナーはこの大種牡馬サンデーサイレンスの最高傑作を手放すつもりはなかったようだ。

 そこにはもちろん大オーナーとして「日本競馬発展のため」という思いがあっただろうが、最盛期に種付け料が4000万円まで高騰した事実を踏まえるとディープインパクトは「100億円ですら安い」とも言えるのだろう。

 昨年にはソダシで白毛馬初のG1制覇を飾るなど、もはや異次元の成功者と述べても過言ではない金子オーナー。その成功の秘訣は相馬眼も然ることながらが、目先の利益に流されない志にあるのかもしれない。

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