【徹底考察】有馬記念(G1) サトノダイヤモンド「世代最強を証明した菊花賞。有馬記念制覇に向け、レジェンドだけに許された最強馬の『領域』に手を掛ける」


 ほぼ馬なりで抜け出し、主戦のC.ルメール騎手がムチを打ったのは抜け出した後に気を抜かないようにするだけのもの。最後も流してゴールしたが、その差は2馬身1/2という決定的な差で何の危なげもなかった。

 戦前こそ「2強」ムードだったが、レースが終わってみれば紛れもない「1強」の内容だ。菊花賞を終えた段階でサトノダイヤモンドは「世代から一歩抜け出した」と述べても過言ではないほどの完勝劇だった。

【血統診断】

 母マルペンサはアルゼンチンでG1を3勝した名牝。母の父Orpenはダンチヒ系のスピード種牡馬で2010年にはアルゼンチンのリーディングサイヤーになるほどの成功を収めている。日本では馴染みの薄いアルゼンチン血統だが、ディープインパクト×ダンチヒ系であれば、G1を7勝しディープインパクト産駒で最も大きな成功を収めたジェンティルドンナがいる。距離適性に関しても気性に問題が少ない本馬であれば、ジェンティルドンナのように距離をこなせるはずだ。また、母型にはアルゼンチンの大種牡馬サザンヘイローの血が入っているが、これはライバルの一頭マカヒキにも共通しているところが興味深い。純粋な切れ味ではリファールのクロスがあるマカヒキの方がありそうだが、こちらはその分スピードの持続力や底力に優れた配合だ。

 だが当初、前走の3000m戦に関しては強気にはなれなかった。

 それは当然、「ディープインパクト産駒が菊花賞を勝ったことがなかった」という点に起因するが、過去の菊花賞で上位を賑わせたディープインパクト産駒の内、2着のサトノノブレスがトニービン、3着のトーセンラーがSadler’s Wellsと歴代の菊花賞で活躍したスタミナ血統を持ち、4着のラストインパクトの祖母はビワハヤヒデとナリタブライアンという2頭の菊花賞馬を送り出したパシフィカスだからだ。

 つまり、ディープインパクト産駒ながら菊花賞で活躍できるだけのスタミナ的な要素を持っていたということだが、サトノダイヤモンドにはそれがないと判断したのだ。

 ただ、例外的な存在として昨年2着のリアルスティールは、サトノダイヤモンドと同様……いや、本馬以上にスタミナ的要素に乏しいディープインパクト産駒だった。その事実から「本馬が多少の距離不安を絶対能力の高さでねじ伏せてしまう可能性は十分にある」と結論付けたのだが、結果はそれ以上の内容。これは本馬への見解を改める必要性があると同時に、菊花賞そのものへの認識を大きく変える必要があると強く思わされた結果といえる。

 しかし、だからといってサトノダイヤモンドをステイヤーと呼べないところが血統の限界か。少なくとも500mの距離短縮はプラスと見る。血統的にこの馬のベストは2000mから2400m。器用さが問われる舞台がどうかだが、菊花賞の走りを見る限りこの馬も競馬が上手になっている印象を受けた。

≪結論≫

サトノダイヤモンドを考察する場合、どうしても「今年の3歳世代が古馬に通用するのか」という疑問がつきまとう。

だが、少なくともディーマジェスティやレインボーラインがジャパンCで通用しなかったからといって、本馬が通用しないと考えるのが早計であることは『考察』で述べた菊花賞の内容が物語っている。

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