JRAの杜撰な管理が生んだ「冤罪」に非難轟々!? 自作自演の処分取り消しで理事長も謝罪…… 武豊も被害に遭った歴史的大失態との共通点とは
関係者による持続化給付金の不正受給疑惑に揺れるJRAだが、これ以外にも”お粗末な事件”が発生していた。
事の発端は、大久保龍志調教師の管理馬トロイカ(牡3歳・当時)が出走した昨年7月12日の阪神4R。このレースでトロイカは2着に入ったが、同馬から規制薬物とされる「ジクロフェナク」が検出された。これを受けてJRAは、大久保龍師に対し過怠金30万円を課していた。
だが、その後の調査の結果、トロイカが競走当日に阪神競馬場で使用した馬房を前日に出走した別の競走馬が使用した際に、同薬物が投与されていたことが判明。JRAは敷料の交換を含む当該馬房の清掃をしているが、適切に行われなかったと考えられる。
そのため、別の競走馬に投与された「ジクロフェナク」が馬房内に残留し、これを翌日に使用したトロイカが摂取してしまった可能性も否定できないことから、JRAは大久保調教師への処分取り消しが適当と判断したことを5日に発表。
後藤正幸理事長は「トロイカ号の管理調教師である大久保龍志調教師、馬主であるゴドルフィン様をはじめ、関係者の皆さまに大変なご迷惑をおかけしたことを心よりおわび申し上げます」と謝罪。今後の再発防止および、信頼回復に努めるとコメントした。
JRAが杜撰な管理を認め、処分の取り消しということでひとまずは解決したとはいえ、処分取り消しが発表されたのは昨年7月から随分と経過してのこと。JRAが過ちを認めたことは一定の評価はできるものの、被害に遭った関係者にとっては冤罪といっていい内容。身に覚えのない言い掛かりをつけられたにも等しい。
ネットの掲示板や一部のファンからは「お役所体質」「名誉棄損で訴えられても仕方ない」「昔なら揉み消していたんじゃないか」といったJRAに対する非難の声も相次いだ。
今回は国内での不手際だが、同じような原因で歴史的な大失態に発展することとなったのが、武豊騎手とディープインパクトが失格となった2006年の凱旋門賞(G1)での禁止薬物検出事件である。
同年10月1日の凱旋門賞で3位入線したディープインパクトだったが、レース後の理化学検査で「ディープインパクトの体内から禁止薬物イプラトロピウムが検出された」とフランスの競馬統括機関であるフランスギャロが10月19日に発表。11月16日には同馬に対し、失格の処分が下された。
イプラトロピウムは人体への使用だけでなく、馬に対しても呼吸器疾患に使われる薬物である。競走馬への投与自体は認められているが、フランスでは体内に残留した状態で競走に参加することは禁じられていた。動物用のイプラトロピウムが日本であまり流通していなかったこともあり、当時JRAは禁止薬物に指定していなかった。
陣営がフランスギャロに提出した弁明書によると「せき込むようになったディープインパクトに対し、フランス人獣医師の処方によりイプラトロピウムによる吸入治療を行った。その際、ディープインパクトが暴れたため、外れたマスクから薬剤が飛散し馬房内の敷料などに付着。それをレース前日から当日の間に何らかの形で同馬が摂取し、レース後まで残留した可能性が高い」というものだった。
JRAの失態となったトロイカとディープインパクトの事件だが、いずれも馬房内の敷料に起因していたことは、2頭にとって意外な共通点といえるのかもしれない。