JRA競馬中継「視界不良」で16頭立てが“6頭立て”に……「どうやらスタートを切っているようです」という実況で始まった伝説のレース
関東では東京・神奈川・千葉・埼玉といった区域に大雨警報が発令された13日、千葉県船橋市にある中山競馬場も酷い豪雨にさらされた。
不幸中の幸いか、新型コロナウイルスの影響で未だ無観客開催が続く中山だが、述べるまでもなく現場の関係者は大変な状況……。多少の雨には動じない競走馬や騎手にとっても、さすがに大なり小なりの支障はあったようだ。
そんな中、ひときわ災難だったのが、この日の実況を担当したラジオNIKKEIの小林雅巳アナだ。
朝から降り続く雨がピークを迎えた14時頃、中山では8Rが行われた。JRAの公式ホームページにアップされたレース映像……つまりはグリーンチャンネルの中継画面が“灰色”に塗りつぶされ、ほとんど何も見えない中でゲートが開かれた。
こうなってくると視聴者からすれば実況だけが頼りになるのだが、ほぼ視界を奪われているのは小林アナも同じだったようだ。16頭立て、ダート1200mのレースとなれば、本来なら実況は大忙し。まさにプロの腕の見せ所なのだが……。
「内から3番クリノマンジェリカ……さらに、それを制して上がって行きました……7番のターコイズリング……外から16番グラディオロが3番手……2番手から3番手」「エルメーム……これが4番手」
豪雨のせいでほとんど見えないとはいえ、いい加減な実況をするわけにもいかない。小林アナも懸命に1頭1頭、馬番と名前を確かめるようにアナウンスするが、歯切れの悪さを隠し切れるはずもなく……結局、最後の直線に入るまでに名前を呼ばれたのは、上記の4頭だけだった。
「今はアナウンサーの方も映像を見て実況するので、逆に『よく見えたな』という印象です。最後はきっちり1着タマモキャペリンと2着デルマシャンパンの動きを実況できていましたが、担当したアナウンサーは災難だったでしょうね。あそこまで雨が強くなることはなかなかないと思いますので、ある意味では貴重な実況だったと思います」(競馬記者)
絶望的な「視界不良」で有名なのは、やはり1996年のバイオレットS(OP)だろう。
猛吹雪に見舞われたレースは、「ほとんど……見えません」という広瀬伸一アナの悲痛な声から幕を開けた。