JRA 武豊も味わった苦い記憶……サトノレイナス「逆転」に意外な落とし穴!? オークス(G1)でもソダシ優勢を予感させる「三冠馬誕生」のサインとは
先週の桜花賞(G1)はソダシ(牝3、栗東・須貝尚介厩舎)が、デビューから無傷の5連勝で白毛初のクラシック制覇の偉業を達成。ゴール前では2着サトノレイナスにクビ差まで詰め寄られるシーンもあったが、早め抜け出しでセーフティリードを保った吉田隼人騎手の完璧なエスコートもまた見事だった。
昨年の阪神JF(G1)に続くG1・2勝目を挙げたソダシは、3歳牝馬で唯一無敗の2冠馬の資格を得たことにもなる。次なる目標はオークス(G1)、場合によっては日本ダービー(G1)も視野に入って来る。
樫の舞台は桜花賞の芝1600mからさらに距離が800m延びる芝2400mの条件。次は距離克服が陣営のテーマとなるだろう。
その一方で、またしても2着に敗れたサトノレイナスは距離延長が歓迎のタイプだ。同馬を管理する国枝栄調教師は「マイルは忙しい」、手綱を執るC.ルメール騎手も「オークスに行きましょう」と逆転への自信も見え隠れするコメントを残した。
サトノレイナスの全兄サトノフラッグは昨年の菊花賞(G1)で3着に入っているように、血統的にも距離延長は問題ないタイプ。各メディアでも桜花賞の結果に対し、オークスなら逆転濃厚と論じた内容も多かった。
だが、着差こそわずかだったとはいえ、サトノレイナスがソダシに連敗した事実は確かでもある。そして、以前にも似たような状況で逆転に失敗した例も触れておきたい。
それは2003年の牝馬クラシック戦線だ。この年の桜花賞は武豊騎手のアドマイヤグルーヴが1番人気、幸英明騎手のスティルインラブが2番人気にそれぞれ支持された。レースは好位4、5番手のインを追走したスティルインラブに対し、アドマイヤグルーヴは出遅れて最後方からの競馬となる。
4コーナーを回って先に抜け出したスティルインラブを直線で外に持ち出されたアドマイヤグルーヴが3F上がり最速の豪脚で追い上げたものの3着に敗れた。ゴール前の際立つ末脚の切れと出遅れた不利もあり、レース後のアドマイヤグルーヴに「オークス確定」の雰囲気すら漂っていたことは不思議ではない。
直線の長い東京コースに替わることも含め、単勝3.5倍で1、2番人気を分け合った桜花賞とは異なり、ファンはアドマイヤグルーヴを単勝1.7倍の圧倒的1番人気に支持し、スティルインラブは桜花賞馬にもかかわらず、大きく離された単勝5.6倍の2番人気に甘んじた。
ところが、いざレースが始まってみるとアドマイヤグルーヴは、またしても大きく出遅れて最後方からの競馬を強いられる。スローペースで流れた展開も向かず、2冠を制したスティルインラブから0秒7も離された7着でゴール。逆転を信じた陣営の期待は脆くも崩れ去った。
秋のローズS(G2)で一矢を報いたアドマイヤグルーヴだったが、大一番の秋華賞(G1)ではまたしてもスティルインラブに先着を許して2着。その結果、牝馬3冠すべてで1番人気となったアドマイヤグルーヴだが、勝利を収めたのはすべて2番人気のスティルインラブだった。
そして今年の桜花賞もまた1番人気サトノレイナスが出遅れて2着に敗れ、2番人気ソダシが優勝、距離も伸びて直線も長くなる東京の舞台で逆転濃厚と見られている雰囲気もこのときと重なる部分がある。
2頭がオークスで再度対決するなら、おそらくまたサトノレイナスが1番人気で、距離に不安を囁かれるソダシは2番人気となる可能性が高い。
再びソダシがサトノレイナスを返り討ちにするようなら、昨年のデアリングタクトに続く2年連続の牝馬無敗三冠も現実味を帯びて来るのではないだろうか。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。