「浅間のいたずら 鬼の押出し」が、いざJRAの皐月賞(G1)へ!? 郷土かるた? 惑星? 出走馬たちに秘められたその意味とは?
いよいよ18日にゲートが開く皐月賞(G1)。記念すべき第1回は、今から80年以上も大昔の1939年に施行されるなど、歴史と伝統をあわせ持つ、牡馬クラシックの第一関門となるレースだ。
一生に一度しか出走できない、選ばれし出走馬たち。今年は特に、耳慣れない馬名が集まった印象がある。
まずは競馬ファン以外にも知ってほしいアサマノイタズラから。その珍しい馬名は、群馬県民に親しまれている「上毛かるた」にある「浅間のいたずら 鬼の押出し」から命名された。
同馬を所有する星野壽市(ほしの・じゅいち)オーナーは、群馬県高崎市に本社を構える三栄商事株式会社の経営者でもある。同社は毎年、8月に行われる「高崎まつり花火大会」など県内のイベント協賛企業としても有名で、同オーナーは群馬県を代表する名士としての肩書も持っている。
郷土かるたとして、群馬県民に愛されている上毛かるた。星野オーナーは郷土を思い、その読み札の「心の燈台 内村鑑三」から、所有馬のココロノトウダイが誕生。さらには「平和の使徒 新島襄」からヘイワノツカイが、「雷と空風 義理人情」からライトカラカゼ……といったように、読み札から命名された「上毛かるた軍団」は、意外と多い。
ちなみに2013年の桜花賞(G1)を制したアユサンも所有馬の一頭。同オーナーにとって、皐月賞に駒を進めたアサマノイタズラは、2度目のクラシック出走となる。
続いて、舌を噛みそうな馬名のヴィクティファルスについて。
その馬名は、木星の付近を浮遊するガリレオ衛星につけられた星の名前で、その由来は同馬の母父にあたるガリレオからつけられた。雨予報で悪道が予想される皐月賞では、その血統からヴィクティファルスが好走する可能性は十分にある。ガリレオの血を受け継ぐ本馬が「大金星」を挙げることができるか。
宇宙に浮かぶ星や星座つながりでいうと、若葉S(L)を勝利して皐月賞出走に名乗りを挙げた、アドマイヤハダルも見逃せない。
アドマイヤはおなじみの冠名だが、ハダルとは、ケンタウルス座を構成する星の名前。ギリシャ神話に登場する、上半身は人間で下半身は馬という不思議な姿をした怪物・ケンタウルス。その姿を形どった星座のなかで、ハダルはその右前足の部分に位置する星だという。
なぜか宇宙に浮かぶ星関係の名を持つ出走馬が多い、今年の皐月賞。1勝クラスながら出走登録しているルーパステソーロも、そのうちの一頭だ。
テソーロとは、こちらも競馬ファンにはおなじみの了徳寺健二オーナーの所有馬につけられる冠名で、スペイン語で「宝物」という意味を持つ。ルーパスとは、これはおおかみ座のこと。「おおかみ座の宝物」とは、いまいち意味がわからないが、まあ良しとしよう。
今年の皐月賞には、ほかにも日本人には耳慣れない馬名の馬たちがスタンバイしている。
有力馬の一頭として推されるエフフォーリアは、ギリシャ語で「強い幸福感」という意味。前走の共同通信杯(G2)を勝利して、あのC.ルメール騎手に「(あの馬は)ダービーホースですよ」といわしめた実力馬は、馬券を買ったファンに幸福感を与えることができるか。
同じくきさらぎ賞(G3)を制したラーゴムの馬名由来は、スウェーデン語で「適度であり、節度あること」という意味。これは同じ北欧のデンマークでは「ヒュッゲ」とよばれる、「心地よい空間」や「楽しい時間」といったライフスタイルを指す言葉だ。
ほかにも前走で京成杯(G3)を制したグラティアスは、ラテン語で「感謝」という意味……といったように、珍名のほか、星や星座などの専門用語、さらには日本人には馴染みが薄い諸外国語を由来とする馬名など、耳慣れない馬名が並ぶ今年の皐月賞。近年稀にみる混戦ムードが漂う今年は、それぞれの出走馬に上位進出のチャンスがある。
果たしてゴール前では、どの馬名が連呼されるか。さらにはどんな馬名が掲示板を占拠するか。今から注目してレースを待ちたい。