JRA 15馬身差完敗オジュウチョウサンに「お別れ引退」の声続々。中山グランドジャンプ(G1)敗戦に主戦騎手「力を出し切ってない」も……
17日、春の障害王を決める中山グランドジャンプ(G1)は、1番人気のメイショウダッサイ(牡8歳、栗東・飯田祐史厩舎)が優勝。昨年の中山大障害(G1)に続くG1連勝を成し遂げ、ハードル界の新統一王者に君臨した。
一方、前人未到の中山グランドジャンプ6連覇に挑んだオジュウチョウサン(牡10歳、美浦・和田正一郎厩舎)は、最後の直線で本来の伸びを欠いての5着。
ショッキングな敗戦だったが「王者陥落」の予兆は、誰もが感じ取っていたのではないだろうか。
2016年6月の東京ジャンプS(G3)で初の1番人気に推されて以来、障害レースでは約4年、1番人気に支持され続け、その期待に応えてきたオジュウチョウサン。しかし、今回の中山グランドジャンプでは2番人気。ファンが最も信頼したのは、新王者メイショウダッサイの方だった。
レース後、オジュウチョウサンの石神深一騎手は「前半のペースが遅く、馬が力んでいました。馬とケンカしながらのレースになってしまった。道中のリズムも悪く、それが飛越(のミス)に繋がった」と敗因を分析。
だが、勝ったメイショウダッサイとの差は約15馬身という決定的なものだった。それだけに政権交代、そしてオジュウチョウサンが約5年間守り続けた王権の終焉は拭い切れない。
絶対的だった王者に大きな“亀裂”が入ったのは、昨年11月の京都ジャンプS(G3)だった。
前走で中山グランドジャンプ5連覇を達成していたオジュウチョウサンは、単勝1.1倍という絶大な支持を受けていた。しかし、最後の直線で伸びを欠いての3着……自身が持つ障害重賞連勝記録は「13」でストップしてしまった。2着とはクビ差だったが、勝ったタガノエスプレッソには1馬身以上の差をつけられる完敗だった。
なお、レースが6頭立てだったので複勝馬券の対象は2着まで。オジュウチョウサンは3着に敗れたため、単勝1.1倍の馬の複勝が不的中となるのは、1986年以降のJRA重賞では初だった。
「レースは3140mと、4000m超えで真価を発揮するオジュウチョウサンにとっては、やや短い距離でしたし、石神騎手がレース後に『最後の障害で脚をぶつけて、馬の気持ちが途切れた』と話していた通り、最後の障害で少し躓くシーンもありました。
ただ、単純にあのオジュウチョウサンが障害レースで負けたシーンは、やはり驚きましたし、しばらく言葉を失ってしまいました」(競馬記者)
“外野”の記者でさえ言葉を失ってしまうくらいなのだから、オジュウチョウサン陣営のショックの度合いは想像に難しくないだろう。
そんな“オジュウショック”の影響があったのか、その後の石神騎手は年内未勝利。障害騎手だけに騎乗回数は決して多くないが、年が明けても連敗が続き、初勝利を挙げたのは先月28日だった。
「気になったのは、“その後”の石神騎手の落馬の多さでした。オジュウチョウサンで敗れた次の次のレースで落馬……幸い大事には至らなかったのですが、年明けの1月にまた落馬。さらに3月にも再び落馬と、どこか精彩を欠いているようにも映りました。
石神騎手はオジュウチョウサンの主戦として有名なのはもちろん、2016、17年には障害リーディングを獲得。一昨年、昨年もリーディング2位と紛れもない名手だけに、本来であれば、これだけ頻繁に落馬する騎手ではないハズなのですが……」(同)
「(今年で10歳だが)衰えも全くなかったですし、返し馬の時点では『勝てる』と思っていた。今日は、この馬の力を出し切ることが出来ていません」
レース後、石神騎手はそう気丈に話したが、ネット上の競馬ファンからはSNSや掲示板を通じて「オジュウおつかれさま」「さすがにもう引退か」「これで引退かもね」「もうゆっくり休んでほしい」といった“お別れ”の声が相次いでいる。
果たして、ついに引退の時を迎えるのか。それとも年末の中山大障害にリベンジを懸けるのか。稀代のジャンパーの動向が注目を集めている。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。