JRA 「新婚ホヤホヤ」森一馬、次代を担う若手有望株の意外な素顔! メイショウダッサイで絶対王者オジュウチョウサンを撃破、障害界に世代交代を告げる一陣の風
先週、中山競馬場で行われた第23回中山グランドジャンプ(J・G1)は、単勝1.8倍の圧倒的人気に応えてメイショウダッサイ(牡8、栗東・飯田祐史厩舎)が優勝。同レースで5連覇中だった障害の絶対王者オジュウチョウサンは、2番人気に支持されたものの、5着に敗れて6連覇の夢は断たれることとなった。
また、同馬はレース後、左前第1指骨の剥離骨折が判明した。全治は未定だが、年齢的にも10歳と高齢でもあり、再起を期すには厳しい道のりとなりそうだ。
この勝利によってオジュウチョウサンに代わり、名実共に障害界のチャンピオンになったメイショウダッサイの手綱を任されているのが2年連続で最優秀障害騎手を受賞している森一馬騎手だ。
パートナーを新王者へと導いた手腕も見事だが、人格者としても関係者から高い評価を受けている。
「彼は何しろ謙虚で努力家。あれだけ活躍していながらも、全くおごったところがありません。インタビューなどの受け答えもしっかりしていますし、まさに好青年という感じで、関係者の受けもかなりいいですね。
勿論、障害馬を作る技術も長けていて、先輩の北沢伸也騎手は森一騎手が障害に乗り始めた頃から『あいつは上手いよ、数年後には一馬の時代が来るんじゃないかな』と今の活躍を予見していました」(栗東のTM)
今では一部のファンからは「障害レースは森一を買っておけば大丈夫」と言われているほどの、活躍を見せているように充実一途。特に今年は連対率が5割を超えるハイアベレージである。メイショウダッサイとのコンビで中山グランドジャンプ、中山大障害の両G1を制覇したように、しばらくは森一馬時代が続きそうな雰囲気もある。
ただ、そんな森一騎手もデビューの頃はかなり苦労したようだ。上背があるので、減量騎手時代は体を作るのに苦しみ、関東の人間なので関西特有の空気に馴染めない雰囲気もあったらしい。
「確か1年目の時ですが、何の連絡もなしに朝の調教に出てこなかったんです。これには所属の松永昌博厩舎の人達は大慌て。寝坊かと思ってすぐに電話で連絡をしたのですが、何とホームシックで実家のある神奈川に戻ってしまっていたんです。
師匠の松永昌先生や親の説得でもう1度チャンスを貰いましたが、そこでの対応を間違っていれば、もしかしたら騎手を辞めていたかもしれません。松永昌厩舎は昔ながらの温かいスタッフが多く、戻って来られる場所を用意してくれたのも大きかったと思います」(同)
結婚して人生の伴侶も得た森一騎手はプライベートも充実。厩舎の後輩・小沢大仁騎手もデビューして、兄貴分としても頼られる存在になっている。
まだまだ伸びしろに期待できる20代で、これから障害の記録をどれだけ更新するか楽しみな若手の有望株といえそうだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。