JRA M.デムーロ「ダービー&オークス」“見学”の可能性……フローラS(G2)「亡き恩人のために」ユーバーレーベンに懸ける想い
それでも、この男には期待したい。
クラシック開幕直前に松山弘平騎手が騎乗停止になったことで、騎乗者が未定となった桜花賞のアールドヴィーヴルと皐月賞のグラティアス。これらの代打騎乗に見事成功したM.デムーロ騎手だったが、喜びもつかの間、今度は競馬の祭典である日本ダービー(G1)とオークス(G1)の両方を“見学”する可能性が出てきている。
アールドヴィーヴルと共に挑んだ桜花賞(G1)は直線外から追い込むも、4着だったアカイトリノムスメから3馬身離れた5着。グラティアスの皐月賞(G1)は15番枠だったということもあるが、終始外々を回る展開となり、一瞬の脚は見せたものの、ほぼ流れ込むような形で6着に終わった。
桜花賞から3日後の14日、アールドヴィーヴル陣営は松山騎手とのコンビでオークスに向かうことを早々と発表。また、グラティアス陣営も皐月賞から同じく3日後の21日に、松山騎手とのコンビでダービーに行くことを表明している。
「どうやらデムーロ騎手は、完全に代打要員だったみたいですね。以前であれば日本人騎手から外国人騎手に乗り替わった場合、そのまま乗り続け、なかなか日本人騎手には戻ってこない、なんてこともありましたが、今回は滞りなく松山騎手に戻ることが発表されています」(競馬記者)
ダービーとオークスで確たる騎乗馬がいなくなってしまったデムーロ騎手。それだけに、今週のフローラS(G2)に出走を予定しているユーバーレーベン(牝3歳、美浦・手塚貴久厩舎)に懸ける期待は強いものがありそうだ。
ユーバーレーベンの収得賞金は現在のところ1000万円。オークス出走に向けて、決して安泰と言える数字ではない。何とかトライアルで2着以内に入り、優先出走権を獲得したいところだろう。
だがそれとはまた別に、デムーロ騎手には同馬で何が何でも結果を出したい理由がある。先月19日、残念ながらこの世を去ったマイネル軍団の総帥・岡田繁幸さんである。
「いつもいい馬に乗せていただいて、昔からめちゃくちゃ優しかった」と話すデムーロ騎手。5日、北海道で行われた岡田さんのお別れ会にも出席していた。
2005年のジャパンC(G1)でコスモバルクの騎乗依頼を受けていたが、自身の落馬で騎乗できなかったことを今でも悔やんでいると言い「競馬界にとっても残念ですし、素晴らしい人だったのでとても悲しいです」と別れを惜しんでいる。
岡田さんが亡くなった翌日に行われたフラワーC(G3)は、自身の騎乗停止でユーバーレーベンに乗ることができなかった、それだけに、今回は何としてでも結果を出し、亡き恩人に吉報を届けたいところだろう。
お別れ会では「ユーバーレーベンでオークスを勝ちたい」とも誓ったというデムーロ騎手。やはり、この男の姿は常に大舞台で見ていたいものである。