JRA 武豊、ウマ娘大ヒットに「非常に嬉しい」も非常識ファン「悪質行為」に牧場から悲鳴……タイキシャトル「たてがみ事件」から2年、競馬ブームの代償

 8日、引退馬が余生を過ごしているヴェルサイユリゾートファームが、公式ホームページのブログを更新。無許可で見学に訪れるファンに対し、改めて警告を行っている。

「最近牧場内にアポイントなしで無断で入ってくる方が増えています。ゴールデンウィーク前から増えてきた印象で、当牧場は完全事前予約をお願いしております」

「引退馬の余生の不安定さ、これをいち生産者としても少しでも解決したい」という想いから、ヴェルサイユファームから分場という形で2018年に誕生したヴェルサイユリゾートファーム。

 こういった牧場を見学する際は、事前にスタッフや関係者から許可を取ることが常識だが「予約なしや見学時間外と分かってたけど、近くに来たんで。と平然と言われるので驚きます」と、現地のスタッフも非常識なファンへの戸惑いを隠せないようだ。

「道路挟んだ放牧地でも見知らぬ車がスーッと入っていくと、とても恐く、走ってなになに?と行くこともしばしば」など、あり得ない行為に及んでいるファンも珍しくないなど、牧場スタッフとファンの信頼関係で成り立っている「牧場見学のマナー」が今、崩壊の危機を迎えている。

「コロナ禍で外出自体が自粛ムードにある昨今に、こうした事態が起こってしまうこと自体に驚きですが、どうやらこういった非常識なファンの中心には、最近大ヒットしている『ウマ娘』から新たに競馬ファンになった人も少なくないのかもしれません。ヴェルサイユファームには、タイキシャトルやメイショウドトウといった『ウマ娘』に出演している名馬もいますしね。

もちろん『ウマ娘』自体には何の責任もありませんが、せっかく競馬が盛り上がっているのに、こういった非常識な一部のファンの行為で、現場の方が迷惑を被るのは非常に残念です」(競馬記者)

 ヴェルサイユファームといえば、2019年9月にフランスのジャック・ル・マロワ賞(G1)などG1・5勝でJRAの殿堂入りを果たしたタイキシャトルと、ジャパンC(G1)などG1・2勝のローズキングダムらの鬣(たてがみ)が切られるという事件があったばかり。

 鬣がフリマアプリの『メルカリ』で出品されるなど、悪質極まりない行為は競馬の枠を超えて大きな問題となり、その後「鬣を切断、所持していた疑い」で女性が逮捕される事件に発展した。

「これで一件落着かと思ったのですが、実はその後、その女性は不起訴処分となっています。札幌地検は不起訴の理由を明らかにしていませんが、切断による『損害額が小さい』ことなどが考慮された可能性があるとのことでした。

ヴェルサイユファームによると、逮捕された女性は自供していたそうですが、それでも不起訴処分になってしまったことは当時も大きな話題になりました」(同)

 また、ブログでは「見学不可などにはしたくないです」と心境を吐露。だが、鬣事件の際には当面の見学を中止したように、これ以上被害が出るようなら、相応の対処をせざるを得ないだろう。いずれにせよ、損をするのはヴェルサイユファームに他ならない。

 先日のニコニコネット超会議に出演した武豊騎手は『ウマ娘』の大ヒットについて「非常に嬉しい」とコメント。「ウマ娘から実際の競馬に興味を持っていただく方も絶対いるだろうし、競馬というものを知ってもらえるのは嬉しい」と前向きな感想を語っていたが、このような状況を招いては本末転倒だ。

 また、こうした被害はヴェルサイユファームに限ったことではないようだ。牧場見学については「競走馬のふるさと案内所」というサイトで、手軽に各牧場の状況や見学マナーを知ることができる。ぜひとも参考にしてほしい。(文=銀シャリ松岡)

 競走馬のふるさと案内所「牧場見学ガイド

<著者プロフィール>
 天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。まれに自分の記事で泣く。

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