NHKマイルC(G1)逃げ馬バスラットレオン落馬も史上2番目の超ハイペースに……元JRA安藤勝己氏が指摘「差し決着」になった要因とは
9日、東京競馬場で行われたNHKマイルC(G1)は2番人気のシュネルマイスターが優勝。ハナ差の2着には7番人気のソングラインが入り、1番人気のグレナディアガーズは3着に終わった。
アクシデントが発生したのはスタート直後。3番人気の支持を集めたバスラットレオンがゲートを出てすぐに躓いてしまい、鞍上の藤岡佑介騎手が落馬。スタート早々に競走中止という波乱の幕開けとなった。
過去2戦はいずれも逃げ切り勝ちを収めていたバスラットレオン。2枠4番という絶好枠を引き当て、今回もハナを切るとみられていた。そのため、突如逃げ馬が不在となったことでペースは落ち着くと思われたのだが……。
「バスラットレオンが落馬したことで、特に先行馬に騎乗していた騎手には一瞬迷いが生じたと思います。好スタートを決めたランドオブリバティやルークズネストが他馬の様子をうかがいながら先行するなか、200mを通過したあたりでハナを奪ったのが福永祐一騎手とピクシーナイトでした。
この馬も過去2戦は逃げを打っていましたが、大外18番枠に入ったことで、2~3番手に控える作戦も視野に入れていたはず。ところが内枠の先行馬が明確にハナを主張しなかったことで腹をくくったのでしょう」(競馬誌ライター)
画面越しにはピクシーナイトが押し出される形にも映り、決してハイペースには見えなかった。しかし、画面上に表示された前半3ハロンの通過タイムは33秒7。これは過去10年で最も速く、ダノンシャンティが差し切った2010年の33秒4に次ぐレース史上2番目という高速ラップだった。
福永騎手はレース後、「いつもはリラックスした逃げを打てるが、今日は道中から張り切りすぎていた。その分、オーバーペースになってしまった」とやや暴走気味の逃げになったことを認めている。
しかし、バスラットレオンの競走中止が多くの騎手に錯覚を与えた部分もあったと元JRA騎手の安藤勝己氏は自身のTwitterで見解を述べている。
「バスラットレオンが落馬してもうたにしてはペースが流れた。ただ、乗ってるジョッキーとすれば錯覚するで、手応えと相まってグレナディアガーズは動くのが早すぎた」
おそらく多くの騎手は、バスラットレオンの落馬によって、「ペースは速くならないだろう」と思い込んだはずだ。その思い込みがあったかどうかは分からないが、4角を2番手で通過したグレナディアガーズは結果的に早仕掛けになったことは間違いない。
一方、ワンツーを決めたのは中団からレースを進めた2頭。勝ったシュネルマイスターは4角9番手、2着のソングラインは同7番手からという差し決着だった。
さらに掲示板を確保した4着のリッケンバッカーは4角16番手、5着ロードマックスは同11番手から追い込んだ。高速馬場だったとはいえ、上位入線馬の道中の位置取りからも先行馬にはかなり厳しいペースだったことが分かる。
バスラットレオンの落馬で、漁夫の利を得たと思われた先行各馬。終わってみれば、グレナディアガーズ以外は総崩れという皮肉な結果となった。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。