東京優駿(G1)で「天国と地獄」を味わった2頭の明暗!? 武豊のダービー初勝利を阻んだフサイチコンコルド、「単勝1.6倍」でウオッカの引き立て役になった悲劇
30日、東京競馬場では競馬の祭典・日本ダービー(G1)が開催される。3歳世代の頂点を決める大一番は、1年で最も盛り上がりを見せるお祭りといってもいいだろう。
皐月賞(G1)を無敗で制したエフフォーリアと若武者・横山武史騎手のフレッシュなコンビの無敗二冠達成には大きな注目が集まっている。同騎手は戦後では最年少となる22歳5ヶ月9日でのダービージョッキーを目指す。
天才の名を欲しいままにしたあの武豊騎手でさえ、初騎乗の際には「何もできずに終わった」と後に述懐したほどのプレッシャーに襲われたというダービーの舞台。以降も善戦はしたものの、2着が最高着順。待望のダービー初勝利を挙げたのは、10度目の正直で手にした1998年スペシャルウィークまで待たなければならなかった。
そんな武豊騎手が最もダービー制覇に近づいた瞬間は、ダンスインザダークで挑んだ96年。若き天才の悲願を阻止したのは、史上2番目の若さとなる24歳でダービージョッキーの栄誉を掴んだ藤田伸二騎手(当時)と「和製ラムタラ」の異名を持つフサイチコンコルドのコンビ。武豊騎手とのコンビで1番人気に支持されたダンスインザダークに対し、無敗とはいえキャリア2戦のフサイチコンコルドは7番人気と大きな開きがあった。
だが、パートナーの力に自信を持つ武豊騎手が、好位からの横綱相撲で押し切りを狙ったところを、これを徹底マークしていたフサイチコンコルドが外から強襲。2頭の叩き合いはクビ差でフサイチコンコルドに軍配が上がった。再び2頭が相見えた秋の菊花賞(G1)はダンスインザムードが快勝したものの、同馬でダービーを勝てなかったことは武豊騎手にとっても誤算だったに違いない。
7番人気の伏兵ながらダービーで大金星を挙げたフサイチコンコルドに対し、単勝1.6倍の圧倒的1番人気で7着に敗れたのがフサイチホウオーだ。
同馬はデビューから4連勝で挑んだ皐月賞を3着。無敗が途切れたとはいえ、前残りの展開で脚を余しての敗戦だった。多くのファンが、ここまで3戦3勝と得意にする東京コースに替わるダービーなら巻き返しは容易と考えたのも無理はなかった。
しかし、レースを制したのは3番人気のウオッカ。牝馬によるダービー制覇は1943年のクリフジ以来、64年ぶりの快挙だった。フサイチホウオーは中団からの競馬を進めたが、最後の直線で伸びを欠き、ウオッカから遅れること1秒の7着でゴールする。
断然人気を裏切り、まるで引き立て役のようになってしまったフサイチホウオーは、この敗戦を機にそれまでの活躍が嘘だったかのような凡走を繰り返すようになる。巻き返しを期した秋の神戸新聞杯(G2)を1番人気で12着と敗れると、その後は掲示板すら載れない惨敗を繰り返してターフを去った。
同じフサイチの冠名を持つ2頭にとって、まさに天国と地獄ともいえる明暗を分かつダービーだったといえるだろう。
エフフォーリアとサトノレイナスが対決するダービー。
今年はどのようなドラマが待っているのだろうか。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。