JRA 日本ダービー「作戦崩壊」サトノレイナス陣営は現実逃避!? 枠順決定に各陣営から思わず漏れた「本音」ひきこもごも


 27日夕刻、日本ダービー(G1)の枠順が確定した。

 すべてのホースマンが、特別な想いを抱いて参戦する「競馬の祭典」。ダービーに挑む陣営の枠順決定時のコメントを“深読み”すると、やはりその興奮を隠せず、思わぬ“本音”が漏れているのでは?と推測したくなるのは、筆者だけではないだろう。

 最も話題を集めたのは、1枠1番を引き当てたエフフォーリアだ。

 開口一番、「持ってますね」とコメントしたのは鹿戸雄一厩舎の水出大介助手。これは強がりではなく、思わず出た本心だろう。

 ダービー当日の東京競馬場芝コースは、2009年からCコースを使用。開催が進むにつれて傷んだ内側の芝を避けるため、本来の馬場から約6m離れた地点に仮柵を設置することで、内ラチ沿いの芝は守られ、ダービー当日はとくにインコースがウイニング・ロードとなる。

 1986年以降のダービーを振り返ると、枠順別では最多の9勝を挙げている1枠だが、興味深いのが年度別の成績だ。

 9勝のうち1986年から2008年までの22年間で4勝、ダービー当日にCコースが利用されるようになってからの2009年以降で5勝と、コース替わりは明らかに1枠の馬への強力なアドバンテージ。前出の「持ってますね」発言が、現実味を帯びてくるデータといえるだろう。

 この1枠1番エフフォーリアを「メインのライバル。マークできたらベストポジションだと思う」とコメントしていたのがC.ルメール騎手だ。

 これはサトノレイナスの追い切り後の発言だが、皮肉にもマークしづらい反対方向の枠、つまり大外8枠16番に決まった。

 史上4頭目のダービー牝馬Vを狙う国枝栄調教師は、枠順決定の瞬間には「(馬番の)16番は川上哲治!」と、プロ野球巨人のレジェンドを引き合いに出す“珍”コメント。

 続いて「冗談はともかく、真ん中ぐらいがよかったが、決まったものは仕方がない」と発言したようだが、まるで現実逃避のようにも思える“川上哲治発言”は、動揺を隠せなかった故のコメントか。ここに本音が見え隠れしているようにもみえる。

 サトノレイナスの隣、8枠17番に入ったのが、高らかに“逃げ宣言”をブチ上げている藤岡佑介騎手が騎乗するバスラットレオン。「大外枠ですが、戦法は変わらないので。腹をくくっていくだけです」とは、矢作芳人厩舎の宮内茂貴助手の発言だ。

「枠順は大外でいい。他の馬の邪魔は一切しない。賞金もいらない。この馬の能力を確かめるだけでいい」とは、当時のルールでダービー出走が叶わなかった、マルゼンスキーの主戦・中野渡清一騎手が残した名言。

 この名言を“深読み”すれば、ダービーに限らず、やはり大外枠からのスタートは致命的。特に前走NHKマイルC(G1)ではスタート直後に躓いている同馬だけに、逃げる戦法がハマって馬券圏内を脅かすか、じっくりと検討したい。

 “逃げる”といえば、3枠6番のバジオウも不気味だ。

 田中博康調教師は「ハナもあり得る」と積極策を匂わせるコメント。「スタートに不安のある馬ではないが、最内とかよりもいい」とは、1番人気が想定されるエフフォーリアへの牽制球か。いずれにせよ、ゲートが開くその瞬間から、目が離せないダービーとなるだろう。

 一方で、“因縁”の枠順を手にした陣営もいる。

 6枠11番に決まった皐月賞(G1)3着馬のステラヴェローチェは、栗東・須貝尚介厩舎の管理馬。前週のオークス(G1)で8着に沈んだ同厩のソダシと同枠同番だけに、枠順決定後に北村浩平助手が漏らした「ソダシと同じ枠ですね」というコメントはリベンジ宣言そのもの。ちなみに鞍上の吉田隼人騎手もソダシと同じと、陣営にとってはまさにリベンジの一戦となる。

 1枠2番のヴィクティファルスを管理する池添学調教師は「内にエフフォーリアがいて、見ながら競馬ができる」とコメント。ちなみに2014年には、同馬と同じハーツクライ産駒のワンアンドオンリーが1枠2番で優勝。これもなにかの因縁か。陣営にとっては “吉兆”といえる。

 そしてダービー史上最多5勝を誇る武豊騎手が騎乗するディープモンスターは、3枠5番に決定。武豊騎手の通算5勝のうちの2勝を挙げた、1998年のスペシャルウィーク、2005年のディープインパクトと同枠同番であり、これ以上ない縁起のよい枠番を引き当てた。

 池江泰寿厩舎の川合達彦助手の「スタートはうまい方ではないので、ユタカさんにお任せします」という発言は、作戦面でも武豊騎手に任せることを示唆している。

 枠順決定したことで、各陣営はさまざまな思惑が交差しているが、それは予想する競馬ファンも同じこと。

 第88回日本ダービーのゲートが開くまで、あとわずか。枠順が確定したことで、さらに気持ちが高まってきたのは、筆者だけではないはずだ。(文=鈴木TKO)

<著者プロフィール>
野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。

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