JRA 2頭出し「ダノン軍団」の明暗くっきり!? 安田記念(G1)ダノンキングリー激走の陰でダノンプレミアムは「反応が……」、2頭の運命を分けたのは
競馬界の有名な格言の一つに「2頭出しは人気薄を狙え」というものがある。同じレースに、同厩舎もしくは同馬主の馬が2頭(以上)出走してきた場合は、人気薄の好走が目立つことがその由来だ。
6日に東京競馬場で行われた安田記念(G1)。G1・5勝のグランアレグリアが単勝1.5倍の断然人気を集めるなか、野田順弘氏率いる『ダノックス』はダノンプレミアム(牡6歳、栗東・中内田充正厩舎)とダノンキングリー(牡5歳、美浦・萩原清厩舎)の2頭出しを敢行。8番人気のダノンキングリーは先頭でゴールを駆け抜けたが、6番人気のダノンプレミアムは好位から直線伸びを欠き、7着に敗れ、明暗を分けた。
ダノンプレミアムは、昨年12月の香港C(G1)4着以来、半年ぶり。一方、ダノンキングリーも、昨年11月の天皇賞・秋(G1)以来、7か月ぶり。どちらも得意とする休み明けの一戦で、無視できない存在ではあった。
レース前から注目されていたのが2頭の“鞍上問題”だ。これまでダノンプレミアムの主戦を務めていた川田将雅騎手はダノンキングリーにテン乗り騎乗。一方のダノンプレミアムには、これまたテン乗りの池添謙一騎手が据えられた。
「通常なら、ダノンプレミアムには川田騎手が騎乗するのが既定路線のはず。しかし、あえてダノンキングリーの方に『ダノン軍団』の主戦を務める川田騎手を配置しました。ファンからの支持が高かったのは代打騎乗に定評がある池添騎手騎乗のダノンプレミアムの方でした。
結果論になりますが、主戦騎手を乗せた時点で、陣営はダノンキングリーの方により色気を持っていたのでしょう。中間はダノンプレミアムの方が明らかにいい動きを見せていたのですが……」(競馬誌ライター)
騎手の配置以外に2頭の明暗を分けたものがもう一つあるという。それがレース当日の東京競馬場周辺の空模様だった。
「(東京競馬場がある)府中周辺では木曜深夜から金曜の夕方にかけて雨が降り、土曜競馬は稍重からスタート。しかし、午後には馬場も乾き、良馬場発表になりました。前日土曜時点では、日曜午後に少なくない量の降雨が予想されていたと思います。
しかし、実際は心配されていた雨はほとんど降らず。日曜は終日、良馬場のままレースが行われました。もし予報通りの雨が降り、稍重程度に悪化していれば、ダノンキングリーの切れ味は削がれていた可能性もあったでしょう。一方のダノンプレミアムは稍重で通算4戦3勝。多少馬場が渋った方が見せ場を作れたかもしれません。当日の天気も2頭の明暗を分けた一因になったと思います」(同)
レース後、池添騎手が「進め方は悪くなかったが、反応がもうひとつだった」と敗者の弁を述べた一方、川田騎手は「道中のリズムが良かった」とダノンキングリーの走りを称えた。G1レースで上位人気に支持されながらも、厚い壁に跳ね返され続けた実力馬の初G1勝利は、キャリア最低8番人気で手にすることとなった。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。