安田記念(G1)ダノンキングリー「JRA史上初」前走最下位からのG1制覇。皐月賞(G1)3着、ダービー2着の実力馬がスランプに陥った「理由」とは
6日、東京競馬場で行われた春のマイル王決定戦、第71回安田記念(G1)は、8番人気の伏兵ダノンキングリー(牡5歳、美浦・萩原清厩舎)が、1番人気グランアレグリアの猛追をアタマ差抑えて優勝。初のG1タイトルを獲得した。
前走の天皇賞・秋(G1)では3番人気に支持されながらも、まさかのシンガリに敗れていたダノンキングリー。1984年のグレード制導入以降、前走最下位着順からのG1制覇は、JRAの所属馬では史上初の快挙だという。まさに見事なまでの「V字回復」だ。
3歳時には皐月賞(G1)3着、ダービー2着の実績がありながらも、昨年の大阪杯(G1)で3着に敗れたのを境に、徐々に低迷。前述の通り、秋の天皇賞で大敗していたこともあって、この日は単勝47.1倍の伏兵止まりだった。
近2走では精彩を欠いていたダノンキングリー。その理由の1つとして、昨年の大阪杯での奇策が挙げられるかもしれない。
単勝3.8倍の1番人気に支持された昨年の大阪杯。これまで中団待機や好位追走から自慢の末脚を披露してきたダノンキングリーだったか、この日はデビュー以来初となる「逃げ」の手に打って出る。
ペース自体は前半1000m通過が60.4秒とあまり厳しくはなかったが、2番手追走のジナンボーにぴったりとマークされる厳しい展開に。直線では粘り腰を見せるも、最後は力尽き3着に敗れた。
レース後、騎乗していた横山典弘騎手は「こんなにゲートを出るとは。スタートが誤算だった。ぴったりとマークされ、厳しい展開になってしまった」とコメント。ハナを切り、後続から終始プレッシャーをかけられる形が響いたことを認めている。
その後、ダノンキングリーは昨年の安田記念で7着、天皇賞・秋は最下位に敗れた。天皇賞の後、騎乗した戸崎圭太騎手は「力んで走っていた。リラックスできなかった。そのぶんなのか、最後は脚取りがバラついていた」とコメントしている。
「大阪杯で行かせてしまったことで、折り合いがつきにくくなった結果、掛かり癖が出てしまったのかもしれませんね。逃げで新境地を開くタイプの馬もいますが、少なくともダノンキングリーは違ったということでしょう。
実際に大阪杯の後は調教でムキになって走るようになり、コントロールが利かなくなっているという話もありました。昨年の秋の天皇賞ではその辺りが表面化してしまったのではないでしょうか」(競馬記者)
今回が秋の天皇賞以来、7ヶ月の休み明けだったダノンキングリー。管理する萩原師は「馬が出走できるレベルまで至らず、復帰に時間を要した」と話している。強くなった前進気勢をリフレッシュさせるためには、それ相応の時間が掛かったということなのかもしれない。
また、師は「何よりジョッキーの好騎乗のおかげ」と話し、殊勲の川田将雅騎手も「これがこの馬の本来の姿」と語る。見事に立ち直りに成功したダノンキングリーのこれからの活躍に期待したい。
(文=冨樫某)
<著者プロフィール>
キョウエイマーチが勝った桜花賞から競馬を見始める。まわりが学生生活をエンジョイする中、中央競馬ワイド中継と共に青春を過ごす。尊敬する競馬評論家はもちろん柏木集保氏。以前はネット中毒だったが、一回りして今はガラケーを愛用中。馬券は中穴の単勝がメイン、たまにWIN5にも手を出す。