JRA武豊グランアプロウソ函館2歳S(G3)前に「不戦敗」の大誤算! セレクトセール史上最高額の更新も拍子抜け、レジェンドを襲ったデビュー勝ちからの悪夢
6月20日の札幌で武豊騎手を背にデビュー戦を快勝したグランアプロウソ(牡2、栗東・松永幹夫厩舎)。同馬は現役時代にG1・6勝を挙げた2017年の米国年度代表馬ガンランナーの初年度産駒で大きな注目を集めていたが、左後肢の骨折が判明。
松永幹師によると「(全治には)6ヶ月から9ヶ月になると思います。残念です」とのこと。これにより、次走に予定していた17日の函館2歳S(G3)を前に、無念の回避となってしまった。
武豊騎手にとって残念な報せが舞い込んだ。
先週は、2歳新馬でコンビを組んだダービー馬シャフリヤールの甥・アルナシームがクラシックを予感させる勝ちっぷり。短距離はグランアプロウソへの期待も大きかっただけに、レース前に“不戦敗”となってしまったことは痛恨だろう。
振り返れば、昨年の函館でも武豊騎手には苦い思い出がある。
昨夏は同じく6月20日の新馬でデビュー勝ちした、モンファボリとのコンビで函館2歳Sに参戦。新馬戦を5馬身差のレコード勝ちしていたこともあり、単勝オッズ1.5倍の圧倒的1番人気に支持された。
しかし、8枠15番の大外からスタートしたモンファボリは、激しい先行争いに巻き込まれて戦意喪失。逃げた馬すら交わせず、新馬戦の勝ちタイム1分8秒7から2秒近く後れを取る1分10秒6の13着と大敗を喫する。
さらに、モンファボリの鮮烈なデビュー勝ちは、2020年のセレクトセールにも多大な影響を及ぼしていた。
初日のセレクトセール開催は13日と、函館2歳Sが行われる18日の前。モンファボリの半弟であるフォエヴァーダーリングの2019(父ディープインパクト、馬名ダノンマイソウル)の評価も相対的に上がることになる。
その結果、これまでの1歳馬のセールで最高落札価格だった3億6000万円を上回る史上最高額となる4億円で落札されたのである。その後、同日にシーヴの2019(父ディープインパクト、馬名ショウナンアデイブ)が5億1000万円で落札されたため、すぐに記録は更新されたが、モンファボリが函館2歳Sを惨敗した後のタイミングだったなら、ここまで高額にはならなかったかもしれない。
それはともかくとして、武豊騎手は昨年のモンファボリで函館2歳Sを惨敗。雪辱を期すはずだった今年はグランアプロウソがレース前に戦線を離脱という2年連続の誤算。
不振の春から反撃の夏を目論むレジェンドにとって、同馬の骨折は痛恨のアクシデントだったに違いない。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。