JRA武豊は「13年前」の無念をウェルドーンで晴らせるか!? ジャパンダートダービー(G1)ソダシの叔母ユキチャンを襲った悲劇とは
14日(水)には大井競馬場で第23回ジャパンダートダービー(G1、以下JDD)が行われる。
南関東3歳クラシック3冠レースの最終関門で堂々主役を務めるのは、武豊騎手とコンビを組む紅一点のウェルドーン(牝3歳、栗東・角田晃一厩舎)だ。
前走の関東オークス(G2)では1番人気に支持されたウェルドーン。道中では好位を進むと、最後の直線で南関2冠牝馬のケラススヴィアを捕らえ、2馬身差をつける快勝。3連勝を飾ったウェルドーンは、牝馬として初のJDD制覇を見据える。
武豊騎手が8戦1勝と伸び悩んでいたウェルドーンと初コンビを組んだのは、3月の3歳1勝クラスの一戦。そこから一気に才能が開花した。武豊騎手としては、2002年ゴールドアリュール、03年ビッグウルフ、05年カネヒキリに次ぐ、16年ぶり4度目のJDD制覇が懸かる。
また、武豊騎手が牝馬でJDDに挑むのはこれが初めてではない。08年にはソダシの叔母にあたるユキチャンとのコンビで上位人気の一角を担った。いや、担うはずだったと言った方がいいだろう。
シラユキヒメを母に持つユキチャンは、その年の関東オークスで白毛馬として初めて重賞を制覇。その時、鞍上にいたのがテン乗りの武豊騎手だった。勝ちタイムの2分14秒7は当時のレースレコード。2着馬に8馬身もの差をつけた純白のアイドルホース誕生にファンから熱い視線が注がれた。
そして、ユキチャン陣営が次走に選んだのがJDDだった。当時ダートで4戦4勝のサクセスブロッケンという絶対的な存在はいたが、ユキチャンも対抗格の1頭として大いに注目されていた。
ところが、残念なニュースが飛び込んできたのはレース当日のことだ。
「白毛馬のG1初制覇という期待を胸にレース当日、多くのファンが大井競馬場を訪れました。しかし、待ち受けていたのは『ユキチャン出走取消』の一報。レース当日の朝、馬運車に積み込まれる際に厩務員が異変を察知。全身にじんましんを確認したため、陣営は出走断念という決断を下しました」(競馬誌ライター)
じんましんで出走取消というと、他には94年の有馬記念を取り消したマチカネタンホイザの例がある。その時は、マチカネタンホイザが飼葉に紛れ込んだクモを食べてしまい、じんましんを発症したと言われている。
「ユキチャンのじんましんの原因等の詳細は結局分からずじまいだったと思います。幸い症状は重くなかったため、1か月後にはクイーンS(G3)で復帰。秋には武豊騎手とのコンビで秋華賞(G1)にも挑戦しました。
その後は、ダート中距離路線で南関東を中心に5歳まで活躍。引退後は繁殖牝馬として今も白毛の血をつないでいます」(同)
サクセスブロッケンという強敵はいたが、ユキチャンが出走していれば好勝負になっていたかもしれない。武豊騎手は13年前の無念を胸に牝馬でのJDD制覇を目指す。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。