JRAキングカメハメハ「最後の大物」は三冠馬の弟!? ジェンティルドンナの弟スレイマンが1.9秒差の大差勝ち!
18日、函館競馬場で行われた2R・3歳未勝利戦は、2番人気のスレイマン(牡3歳、栗東・池添学厩舎)が勝利。2着馬に1.9秒差の大差をつける圧勝で初勝利を飾った。
「強かったです」
鞍上の吉田隼人騎手が手放しで絶賛するのも当然か。勝ち時計1:46.1は、同日に同舞台で行われた3歳以上1勝クラスより0.7秒も速い。姉に牝馬三冠を始め、G1・7勝のジェンティルドンナがいる良血馬が、ダートで大きく開花した。
14頭立て、ダート1700mのレース。キャリア3戦目にして初のダート挑戦となったスレイマンだったが、「調教に乗って、最初から『未勝利の馬ではない』と思っていました」と今回が初コンビの吉田隼騎手には自信があった。
スタートを決めたものの、出ムチを入れてハナを主張したレオテソーロを行かせる形の2番手から。ただ、これは「速い馬を行かせて待つ形でしたが、道中で砂を被せられてどんな反応を見せるか試す余裕があった」と、この「先」を見据えた吉田隼騎手の作戦通りだったようだ。
そんな吉田隼騎手とスレイマンの“実験”が完了したのが、向正面の中ほどを過ぎた辺りだったのだろう。スッと先頭のレオテソーロに並びかけると、4コーナーで交わして先頭へ。吉田隼騎手がゴーサインを送ると、一気に後続を突き放し決定的な差をつけた。
結局、吉田隼騎手からムチが飛んだのは抜け出した際の1発のみ。あとは気を抜かないように見せムチを入れながら、後ろを振り返る余裕まであった。
「モノが違いましたね。時計的にもクラスが上がっても十分通用しますし、この内容ならオープンまでノンストップでいけるかもしれません。それくらいの走りでしたし、先々も非常に期待できそうです。
スレイマンの母ドナブリーニはジェンティルドンナの活躍以降、5頭連続でディープインパクト産駒が生まれていたのですが、父がキングカメハメハに替わったのが本馬。芝ではデビューから3着、4着と勝ち切れない様子でしたが、ダートでは走りが違いましたね。吉田隼騎手も『ダート適性は高い』と絶賛していました。それにしても芝の三冠馬の弟から、ダート巧者が出るのですから、やはり競馬は面白いですね」(競馬記者)
古来より競馬には「亡くなった種牡馬から大物が出る」という格言のようなものがある。
科学的な根拠は特にないものの、日本競馬に革命を起こしたサンデーサイレンスが亡くなった年にディープインパクトが生まれ、またディープインパクトが一昨年に他界すれば、三冠馬のコントレイルや、現在世界の競馬を沸かせているスノーフォールという怪物が現れた。
だが、ディープインパクトの後を追うようにして一昨年に亡くなった大種牡馬キングカメハメハからは、まだこれといった大物が出ていない。少し気が早いが、大きなスケールを持つスレイマンには、そんな格言を実証するような活躍を期待したいところだ。
(文=大村克之)
<著者プロフィール>
稀代の逃亡者サイレンススズカに感銘を受け、競馬の世界にのめり込む。武豊騎手の逃げ馬がいれば、人気度外視で馬券購入。好きな馬は当然キタサンブラック、エイシンヒカリ、渋いところでトウケイヘイロー。週末36レース参加の皆勤賞を続けてきたが、最近は「ウマ娘」に入れ込んで失速気味の編集部所属ライター。