JRA「夏は牝馬」この時期気になる競馬の格言は正しいのか!? 浮かび上がった見逃せない落とし穴、夏競馬攻略に欠かせない「真実」を有効活用したい
水泳、卓球、ソフトボール……灼熱の日差しのもと行われている東京五輪だが、日本選手の金メダル獲得の吉報が届いている。
なかでも今大会は、女子選手の活躍が目立っている。団体競技では女子ソフトボールが13年ぶり2度目の金メダルを獲得。個人でも大橋悠依選手が、日本競泳女子初の2冠を達成。スケートボードで金メダルを獲得した西矢椛選手は、日本五輪史上最年少の弱冠13歳で金メダルを獲得した。
一方、競馬界に目を向ければ、夏競馬で、決まって話題になるのが「夏は牝馬」という有名な格言だ。いつの時代から囁かれるようになったのかは不明だが、「牝馬は夏に強い」「夏競馬は牝馬を狙え」といった競馬界の定説は、まことしやかに流れている。
そこで今回は、この「夏は牝馬」の格言は、どこまで信用できるものなのかを調べてみた。
集計期間は過去3年のオールシーズンを対象とし、1月から12月の間で検証する。数字の整合性を保つため、牝馬限定戦はデータから省いている。
結論から述べると「夏は牝馬」の格言に説得力はありそうだ。年間通しての勝率は凡そ5%前後から6%前後を行ったり来たりすることが多いのだが、6月から9月あたりの時期は勝率が上乗せされる結果となった。3年という短期間とはいえ、データをそのまま記載してしまっては、かえって煩雑なものとなる可能性もあるため、文章でお伝えしたい。
他シーズンに比して暑い時期の勝率が毎年上がるということは、少なくとも数字の上では正しいようだ。人間でもそうだが、筋肉量の多い男馬は体内に熱が籠りやすく、「夏負け」もしやすい傾向にあるともいわれる。そういったこともあってか、牝馬は男馬より体温調節に優れ、暑さの影響を受けにくいのかもしれない。
では、夏の間は牝馬を盲目的に狙っておけば、間違いないのかとなると、一概にそうとも言えない条件もある。
対象を重賞レースに限定した場合は、むしろ数字を落とす傾向もみられるため、この格言はむしろ意味を成さなくなってしまうのだ。
勿論、競馬は重賞だけ行われているわけではなく、平場のレースが大多数。総合的にみれば「夏の牝馬」の優位は動かない。まとめるならば、「夏の牝馬」が他の季節に比べて好成績を残すことは、格言通りだが、重賞では鵜呑みにしない方がいいといったところだろうか。
このように、イマイチ掴みどころがない牝馬の特性はある意味、気まぐれでその心が読めない人間の“女心”と通じる部分もある。
そうかといえば、パドックでは周りに植えてあるプランターの花の香りを嗅いでぼんやりしていた牝馬が、いざレースでは常識はずれの瞬発力をみせて、他の馬をごぼう抜き。牡馬顔負けの「キレ」をみせたレースを目撃したこともあるだろう。
夏に強い牝馬は“夏女”ともよばれる。そんな夏女たちの微妙な“女心”を推し量り、夏競馬でも馬券をゲットしたいものだ。
(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。