JRA 武豊の兄弟子が「警鐘」鳴らした高速馬場の弊害! 条件戦でもレコード多発の異常さを危惧、アグネスタキオン主戦騎手が指摘した近代競馬の問題点とは
現在、毎日のように熱戦が繰り広げられている東京オリンピックでは、世界新記録を叩き出し、見事金メダルを獲得するケースも珍しくない。陸上男子100mでは、トラックやシューズ、トレーニング方法の進化により年々平均タイムが速くなってきているというデータも算出されている。
そして、タイムの短縮は中央競馬の開催でも同様で、近年は芝レースを中心にこれまで見たことのないようなレコード更新が頻発している。
7月3日・4日の小倉開催では、日本レコードが計3度も樹立されるという異例の珍事が発生した。レコードが出た3レースのうち1Rは重賞だが、残りの2レースは2勝クラスと未勝利戦。好メンバーが集まる重賞ならまだしも、これに比べてレベルで見劣る条件戦でさえ、従来のレコードを超えたのだからこの時の小倉の馬場は、いわゆる「高速馬場」だったと考えていいだろう。
一方、こういった高速馬場に対して、「騎手目線」から警鐘を鳴らしている人物の一人が河内洋調教師だ。騎手時代はメジロラモーヌで史上初となる牝馬三冠を達成し、「牝馬の河内」としても知られており、他にもアグネスタキオンなどの主戦を務めた名手は武豊騎手の兄弟子としても有名だ。
また、『サンスポZBAT』の記事によると、河内師は「ジョッキーが全然上手にならんで」と日本人騎手の技量低下を懸念している。詳細についてはそちらをご覧いただきたいのだが、年々高速化が進む馬場と、騎手の技量にどのような関係があるのだろうか。
一見、無縁にも思える騎手の技量と高速馬場だが、河内師が指摘したのは「これだけ速い馬場だと、とにかく前に行っていないと勝負にならん。脚をためるとか馬群をさばくとか、そういう工夫が必要なくなってしまう」と、“前残り” の結果になりやすい弊害により、後方から競馬するデメリットが増えていることを危惧している。
一昔前ならレコードが出るようなレースは、逃げ先行争いが激化してハイペースで流れた結果、差し追い込み馬が台頭するというのが一般的なイメージだった。開幕週のレースで前残りが多く、開催が進むに従って時計も掛かり、差し馬が好走しやすくなるのも馬場状態と密接に関係している。
ところが、馬場の高速化が極端になると、この前残りの傾向が顕著な状態が続いてしまう。このため、後ろの馬に不利な状況が恒常化してしまう。そうなると、前にいないと勝てないレースばかりになり、河内師が指摘するように馬群を捌く進路取りや追い出しのタイミングの駆け引きが、それほど重要ではなくなってしまう可能性が出てくる。
前にいるだけで勝ててしまうのでは、これに対して騎手の手腕が必要とされる後ろからの競馬で勝つケースがどうしても少なくなる。ということは、騎手のスキルアップや成長をする機会も減るということになるのだろう。
高速馬場と深い関係にあるのがジャパンC(G1)だ。当時の日本レコードを2秒以上縮める2分22秒2という衝撃的な時計をマークした89年のホーリックス。05年のアルカセットにコンマ1秒更新されるまで16年間日本レコードとして残り続けた。