JRAルコルセール「最下位惨敗」に石橋脩も不可解コメント!? ゴールドアリュール甥が「謎」敗戦、ダート無敗の素質馬に一体何があったのか
8日に新潟競馬場で行われた3歳のダート重賞・レパードS(G3)は、1番人気のメイショウムラクモが優勝。鞍上の柴田善臣騎手には、JRA重賞最年長勝利というオマケもついた。
同騎手はかつて2002年から2004年にかけて、関東リーディングジョッキー3連覇という偉業も持つ大ベテランだが、近年は以前ほど重賞で有力馬に騎乗する機会も減りつつある現状。柴田善騎手ファンにとっても、昨年1月の愛知杯(G3)を9番人気デンコウアンジュで制して以来の勝利騎手インタビューは嬉しかったに違いない。
その一方で、メイショウムラクモに次ぐ2番人気に支持されたルコルセール(牡3、美浦・堀宣行厩舎)の大敗は謎である。現役時代にダートG1を4勝し、2002年にはJRA賞最優秀ダートホースにも選ばれた名馬ゴールドアリュールを伯父に持つ血統馬だ。
昨年7月にデビューしたルコルセールは芝のレースを3戦して未勝利ながら、ダートに転じて素質が開花。今年6月に勝利した1勝クラス(東京、ダート1600m)の走破時計1分35秒6(重馬場)は、例年のユニコーンS(G3)勝ち時計と遜色のないタイムだった。
未勝利から使われたダートでは3戦無敗の上、前走の渡島特別(2勝クラス)を楽勝しての臨戦。距離が1ハロン延びるとはいえ、東京と同じ左回りの新潟でファンに勝ち負けを期待されたのも不思議ではない。
ところが、レースではこれといった見せ場もないまま、15頭立ての最下位で終戦したルコルセール。不可解だったのは、レース後に石橋脩騎手が残したコメントだ。
「ゲートはそれほど速くなかったのですが、押して行って狭い所へ行きました。それでもこの流れでは良い位置を取れませんでした」
勝ったメイショウムラクモが強かったことは確かだが、3着以内に入線したのは最後の直線で3番手以内につけていた馬だったように、先行勢に有利なレース展開。ルコルセールは、3連勝したレースでいずれも速いペースを好位から抜け出して圧勝を演じていた馬だ。
しかも、レパードSはこれまで好走していた1600mや1700mよりも流れが緩くなりやすい1800m戦。にもかかわらず、ついていけなかったというのはどうも腑に落ちない。
「ルコルセールはスタートがそれほど速くないのは確かです。とはいえ、それでも3連勝していたように、度外視が可能でしょう。気になる点があったとすれば、外からスムーズに好位へと取りついていたこれまでに対し、レパードSは外の馬が大挙して内へと切り込んだため、狭いところに押し込められるような恰好になったことです。
3走前と2走前はスタートが芝の東京ダート1600m。前走は函館のダート1700mですが、9頭立ての8番とプレッシャーを受けないレースをしていました。これまでとは一転して厳しい展開となったため、心が折れたかのような行きっぷりの悪さでしたね」(競馬記者)
これに関係ありそうなのが、敗戦を振り返った石橋騎手が続けた次のコメントだ。
「最初は砂を被っても我慢できていましたが、向正面で苦しくなると気持ちがなくなってしまいました」
3番人気で6着に敗れたオセアダイナスティもルコルセールと直接対決した1勝クラスでは、インの後方へと押し込められて惨敗を喫したが、気分よく逃げた次走は7馬身差の圧勝で巻き返した。
ダートが得意な馬だからといって、気分よく走ることが出来なければ、リズムが狂って凡走するリスクは十分に考えられる。今回はルコルセールも同じような状況だったのかもしれない。
まだ経験の浅い3歳馬だけに、こういった精神面の弱さを克服することも今後の課題となりそうだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。