JRA G1級の実力馬が「2年4カ月ぶり」に実践復帰!? クロフネ産駒最後の大物になれるか、全姉ホエールキャプチャの良血が関屋記念(G3)に参戦
15日、新潟競馬場ではサマーマイルシリーズの第3ラウンド・関屋記念(G3)が行われる。
夏の新潟で名物のマイル戦に19頭が登録しているが、中でも一際目を引くのはパクスアメリカーナ(牡6、栗東・中内田充正厩舎)の名前があることだ。
3歳前半はNHKマイルC(G1)で6着と、G1で力不足の感は否めなかったが、休養から復帰した12月のリゲルS(OP)で4馬身差の圧勝を飾って本格化。勢いそのまま年明けの京都金杯(G3)を制して重賞初制覇を遂げると、続くマイラーズC(G2)でもダノンプレミアムと僅差の3着に好走する。
このとき4着のインディチャンプが次走の安田記念(G1)を制したように、トップクラスの馬とも遜色ない実力の持ち主だといえるだろう。
勿論、安田記念に出走していればチャンスも十分にあったと考えられたのだが、マイラーズCの翌週に左前脚の骨折が判明してしまい、長期休養を強いられてしまう。
しかも、復帰への道のりは思いのほか長期に渡った。
15年に生まれたパクスアメリカーナは6歳。同期には2歳王者ダノンプレミアムをはじめ、皐月賞馬エポカドーロ、ダービー馬ワグネリアン、菊花賞馬フィエールマンがいる世代。さらには3歳で有馬記念を制したブラストワンピースもいる。
2019年4月に行われたマイラーズCから数えて21年8月の関屋記念は約2年4カ月というブランク。自身が休養中に引退した馬もおり、当時に比べると競馬界の勢力図も大きく変わった。
一般的に人間の4倍の速さで成長するといわれるサラブレッドにとって、今回の復帰はちょっとした“浦島太郎状態”なのかもしれない。
重賞でここまでの休養明けともなれば、いきなりの勝利を期待するのはさすがに少々酷に感じる一方で、パクスアメリカーナは競走馬としてだけでなく、もう一つ重大な使命を背負っている。
それは父クロフネの後継種牡馬として後世に血を残すことだ。
牝馬ではカレンチャンやホエールキャプチャ、アエロリットをはじめ、多くのG1勝ち馬を世に送り出したクロフネだが、残念ながら牡馬の後継種牡馬には恵まれていないのだ。
障害ではアップトゥデイトが中山グランドジャンプや中山大障害を制しているものの、平地のG1では2005年の朝日杯FSのフサイチリシャールや15年のNHKマイルCのクラリティスカイ程度。晩年にもソダシという白毛のアイドルホースが生まれたが、こちらもまた牝馬だった。
いうなれば最後の希望にも映るパクスアメリカーナだが、G1勝ちもない現在の成績では種牡馬入りするにはまだ不十分。休み明けの仕上げに定評のある中内田厩舎だけに、走れる状態にある可能性は高い。
何とか弾みをつけて、秋のG1戦線で好戦を期待したいものである。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。