JRAオグリキャップも目指した米アーリントンミリオン(G1)廃止……世界55位の“マイナーG1”も日本のオールドファンが嘆く理由
今週14日、米アーリントンパーク競馬場でアーリントンミリオン(G1、芝2000m)が開催されるが、実は今年が最後の開催になりそうだ。
昨年、アーリントンパーク競馬場を所有するチャーチルダウンズ社が売却を決定。米国における競馬人気の低下も相まって、すでに9月25日の開催を最後に競馬場が閉鎖される予定となっており、これが最後のアーリントンミリオンになる。
また、今回のアーリントンミリオンは競馬場の創設者となるR.ダチョソワ氏に敬意を表して「ミスターDステークス」と名を変えて施行される見込みだ。ちなみにこれは同日に行われる牝馬限定戦ビヴァリーDステークスに則ったもので、ビヴァリーさんはダチョソワ氏に夫人にあたる。
アーリントンミリオンといえば、1981年に世界初の総賞金100万ドル競走として誕生したことから、その名が付けられた。ダートが主流となる米国の芝路線の核となるべく創設されたレースであり、当時は世界中から大きく注目された。
しかし、米国競馬における「ダート>芝」という構図に大きな変化はなく、年々低レベル化……。一昨年、IFHA(国際競馬統括機関連盟)が2019年度の世界G1トップ100を発表したが、アーリントンミリオンは55位に留まっている。また、昨年は新型コロナウイルスの影響で中止となっていた。
そんなアーリントンミリオンだが、日本ではオールドファンを中心に異例の知名度を誇っている。
それは1990年に当時の国民的アイドルホース・オグリキャップが出走登録を行ったことや、近年でも2019年の勝ち馬ブリックスアンドモルタルが種牡馬として日本へ導入されたことなどにも起因するが、やはり大人気競馬ゲーム『ダービースタリオン』の影響が大きい。
アーリントンミリオン創設から10年後の1991年に誕生した、ダビスタこと『ダービースタリオン』。人気に火が付いたのはもう少し後の話だが、当時、凱旋門賞(G1)とキングジョージ6世&QES(G1)という欧州最高峰のレースと並び、所有馬が海外遠征できるレースとして名を連ねていたのがアーリントンミリオンだったのである。
当時を知らない競馬ファンからすれば「何故?」と思わず首を捻りたくなるところだろうが、逆に言えば、それだけアーリントンミリオンが大きな注目と期待を背負っていたことの裏返しというわけだ。
ちなみにアーリントンミリオンが行われるアーリントンパーク競馬場は、日本の阪神競馬場と姉妹提携を結んでおり、阪神で毎年アーリントンC(G3)が行われている通り、アーリントンパークでも阪神C(米G3)が行われていた。そういった意味でも、非常に残念な幕切れである。
(文=銀シャリ松岡)
<著者プロフィール>
天下一品と唐揚げ好きのこってりアラフォー世代。ジェニュインの皐月賞を見てから競馬にのめり込むという、ごく少数からの共感しか得られない地味な経歴を持つ。福山雅治と誕生日が同じというネタで、合コンで滑ったこと多数。良い物は良い、ダメなものはダメと切り込むGJに共感。好きな騎手は当然、松岡正海。