JRAジェンティルドンナ世代の重賞4勝名牝に「偽物」疑惑!? ノーザンファームを舞台に超絶紛らわしい「出世争い」が勃発!

 22日(日)に行われる札幌記念(G2)で6か月ぶりに実戦復帰するステイフーリッシュ。18日の最終追い切り(札幌芝)では、3頭併せを敢行して最先着を果たした。

このとき、2歳馬ながらステイフーリッシュに2馬身で食い下がったのがベルマレット(牝2歳、栗東・矢作芳人厩舎)だ。

 札幌記念と同日の5R・2歳新馬戦(芝1800m)で初陣を飾るベルマレット。最終追いでステイフーリッシュには格の違いを見せられたものの、もう1頭の併せ馬キングエルメスを約4馬身突き放した。同馬は22日9Rのクローバー賞(OP)で1番人気が濃厚なだけに、自然とベルマレットにも注目が集まる。

 そのベルマレットは、シルクレーシングから総額1600万円と比較的リーズナブルな価格で募集されたアイルランド生まれの外国産馬。父リブチェスターは現役時代にジャック・ル・マロワ賞などマイルG1を4勝し、引退後は母国アイルランドで種牡馬入り。日本で産駒が走るのはベルマレットが初めてとなる。

 ベルマレットの母も注目の存在だ。その名はアイムユアーズ。イギリスで生まれ、アイルランドで5戦2勝という成績を残した後、同地で繁殖入りした。アイムユアーズといえば、日本でフィリーズレビュー(G2)など重賞を4勝した名牝を思い浮かべるファンも多いと思うが、ベルマレットの母は同じ名前を持つ全く別の馬。専門紙などでは「I’m Yours」もしくは「アイムユアーズII」と表記されることになる。

 日本のファンにおなじみのいわゆる本家アイムユアーズは、2009年生まれのジェンティルドンナ世代。12年の牝馬クラシック3冠を皆勤し、桜花賞(G1)3着、オークス(G1)4着など、ヴィルシーナとともに打倒ジェンティルドンナに燃えた名牝だ。3~4歳時にクイーンS(G3)を連覇するなど重賞を通算4勝。引退後は、生まれ故郷のノーザンファームで繁殖牝馬となり、2勝馬モーベットなど3頭がこれまでJRAでデビューしている。

 一方、イギリス生まれのアイムユアーズIIは本家アイムユアーズより2歳年下の2011年生まれ。4番仔ベルマレットはアイルランドで生まれた後、日本に輸入された。シルクRで募集された際は本家アイムユアーズと思い込んだ会員もいて、混乱したとかしなかったとか……。

「同名で、年もあまり離れていないため、ただでさえややこしいのですが、アイムユアーズIIはサクソンウォリアーの仔を胎内に宿した状態で日本に持ち込まれ、ノーザンファームで繁殖入りしました。そのため、現在は本家とIIはともに同ファームで繁殖生活を送っていることになります。

2年前の新潟2歳S(G3)で2番人気に支持されたモーベットは本家アイムユアーズ産駒で、シルクRから募集されましたが、その2歳下のオールユアーズというドゥラメンテ産駒はサンデーレーシングから募集されるなど、2頭を取り巻く環境はとにかくややこしいのです(笑)」(競馬誌ライター)

 変わらないのは、2頭のアイムユアーズに対する繁殖牝馬としての期待の高さだ。

 本家の2歳牝駒オールユアーズは、今秋にデビューを予定。すでにゲート試験に合格しており、ノーザンファーム天栄での評判も上々だ。さらに当歳のレイデオロ産駒は先月のセレクトセールでサイバーエージェントの藤田晋氏によって1億5000万円(税抜)で落札されている。

 アイムユアーズIIも負けていない。日本で生まれたサクソンウォリアー産駒は先月のセレクトセール1歳馬セールに上場され、近藤旬子氏によって1億9000万円(税抜)で落札された。また、今春にはモーリス産駒も生まれている。

 ベルマレットが募集された当初は、紛らわしさから冗談半分で“偽物”扱いを受けたともいわれるアイムユアーズII。いよいよ本家との出世争いが始まろうとしている。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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