JRA武豊マイシンフォニー「ポツン騎乗」にまさかの屈辱! ゴール寸前で初勝利がスルリ、決めたのは横山典弘もビックリの相手
22日、小倉競馬場で行われた2Rの2歳未勝利は、4番人気サウンドクレアが快勝。先に抜け出していたマイシンフォニー(牝2、栗東・松永幹夫厩舎)をゴール前で交わし、2戦目にして初勝利を手に入れた。
1番人気に支持されたのは武豊騎手がコンビを組んだマイシンフォニー。半兄にデビュー3連勝で重賞を勝ったマイラプソディがいる良血馬だ。前走は東京で行われた6月のデビュー戦を、後方から脚を余すような恰好で4着に惜敗。2戦目で勝ち負けを期待されたのも無理はなかった。
しかし、ゴール寸前で初勝利をスルリと逃がしてしまう惜敗は、1番人気のコンビにとって、まさかの結果だったに違いない。
誰もが目を疑うような強襲だった。
フルゲート16頭立ての芝1800m戦。好スタートを決めたマイシンフォニーは、道中を2~3番手の好位につける。1ハロン13秒台のラップも含んだ1000m通過は、62秒1とスローペース。少し掛かるところも見せたが、位置取りとしては「文句なし」だったといえる。
最後の直線に入り、絶好の手応えで外目を抜け出したマイシンフォニー。騎乗していた武豊騎手も少なからずホッとしただろう。
だが、大外からただ1頭、次元の違う脚色で飛んで来たのが、松山弘平騎手とサウンドクレアのコンビ。凄まじい切れ味を見せると、ゴール前でマイシンフォニーをハナ差交わしての差し切り勝ち。
実は、このアッと驚く作戦には伏線があった。
終始、好位から競馬をしていたマイシンフォニーに対し、サウンドクレアは対照的な位置取り。松山騎手がどこまで意識していたのかは不明だが、馬群からポツンと離れた最後方からの追走となった。スローペースだったこともあり、展開的に必ずしも向いていたとは思えない中、溜めに溜めた末脚を一気に爆発させた「松山マジック」ともいうべきか。
「正直、ビックリしましたよ。あんな大胆な乗り方をする騎手は、関東の鬼才・横山典弘騎手くらいかと思っていましたが、まさか松山騎手だったとは……。
馬群から離れた位置で末脚に懸ける騎乗、ファンが俗にいう『後方ポツン』は、てっきり横山典騎手の“専売特許”とばかり思っていました。たまたまだったのか、それとも狙ってやったのかは気になりますね(笑)」(競馬記者)
「前走も最後まで追い込んでくれていましたし、今の外差し馬場は合うと思っていました」
レース後にそう振り返った松山騎手。差す競馬はある程度イメージしていたようだが、ここまで思い切った騎乗には恐れ入る。
勝利まであと一歩のところでハナ差の屈辱には、さすがの武豊騎手も面食らったのかもしれない。
恨めしそうに外のサウンドクレアをチラリと確認する姿があった。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。