JRAグランアレグリアの前に藤沢和雄師が「G1獲り」チャンス!? 「12番人気」の大穴が証明したスプリンターズS(G1)で必要とされるもの
12日、中山競馬場で開催された京成杯AH(G3)は、戸崎圭太騎手の騎乗した7番人気カテドラルが優勝した。約1年ぶりの美酒は、昨年8月の朱鷺S(L)以来。今年の重賞で好走しながらも、3度の2着に泣いていた惜敗続きに終止符を打った。
「進路を探すのが大変でしたが、まだ手応えもありましたし、上手く捌いてくれました」
そして、最後の直線でロスのないコース取りも光った戸崎騎手の好騎乗に、惜しくも勝利を奪われたのが、クビ差の2着に惜敗したコントラチェック(牝5、美浦・藤沢和雄厩舎)だ。
「スタートが決まったのが大きかったですね。斤量は背負っていましたが、中山とは相性がいいですね」
一見、クールに振り返っているようにも映る大野拓弥騎手のコメント。会心の勝利を手に入れた戸崎騎手との明暗は分かれたが、超人気薄の評価を覆した達成感の方が上回ったのかもしれない。
初コンビだった12番人気の大穴と勝利まであと一歩の大健闘を見せた。ハンデ戦ということもあって、勝ち馬との斤量差は0.5キロ。一般的に牝馬は、牡馬より2キロ軽い斤量で走れることを思えば、ほぼ“勝ったに等しい”内容である。
フルゲート16頭立てとなった中山芝1600mのレース。スタートを決めたコントラチェックは、果敢にハナを奪うとそのままマイペースの競馬に持ち込む。直後を追走するマイスタイル、スマイルカナを尻目に馬なりで最終コーナーを回った。
大野騎手のゴーサインに反応すると、後続との差をみるみる広げ、直線の半ばでは楽勝すらありそうなシーン。ゴール寸前で惜しくもカテドラルには捕まったものの、1番人気のグレナディアガーズに先着したことには価値がある。
そして、この好走は改めてコントラチェックの中山巧者ぶりを証明した結果ともいえるのではないか。
これまで重賞はG3を3勝しているコントラチェックだが、その内訳はフラワーC(G3)、ターコイズS(G3)、オーシャンS(G3)と、すべて中山コースで挙げたもの。オーシャンSでは、カレンモエにも真っ向勝負で勝利した。同馬がレシステンシアやピクシーナイトらの一線級を相手にセントウルS(G2)で5着なら、仮にスプリンターズS(G1)へ駒を進めても能力的に通用の下地はありそうだ。
「皐月賞や有馬記念といったG1を回避する馬が出る理由として、中山競馬場がコース適性を求められることが大きいともいわれています。他場に比べて小回りの上、直線も短いため、格上と見られる馬が思わぬ取りこぼしをするケースも珍しくはありません。
それだけに、“中山巧者” のコントラチェックにとって、番狂わせを演じるには最高の舞台設定といえるでしょう。逃げるか2番手の競馬でしか好走例もなく、作戦といっても気分よく行くだけと非常にシンプル。スプリンターズSに出てきても、今回の好走がフロック視されるならチャンスです」(競馬記者)
また、同馬を管理する藤沢和師は、来年2月の引退まで残すところあとわずか。厩舎の看板馬であるグランアレグリアは秋の天皇賞(G1)に向かうため、今年の参戦はない。
しかもスプリンターズSはグランアレグリアで昨年、タワーオブロンドンで一昨年に制した得意レースでもある。調教師生活ラストのスプリントG1に、オーシャンSで中山・芝1200を克服しているコントラチェックを送り込んでも不思議ではないだろう。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。