「背面跳び」「前が壁」ドゥラメンテ弔い合戦で想定外続出も、藤沢和雄調教師“最後”の秘蔵っ子に勝算あり!?

「2015年の2冠馬ドゥラメンテが急死」――。

 そんなショッキングな見出しが躍ったのは今月1日のことだった。急性大腸炎のため、前日8月31日にこの世を去ったドゥラメンテ。この夏に2年目産駒がデビューしたばかりで、種牡馬としてまだこれからという2冠馬の早すぎる旅立ちに多くのファンがショックを受けた。

 その数日後、4日の札幌3R・3歳未勝利にはドゥラメンテ産駒が3頭出走。そのうちの1頭ヴィトーリアが訃報後最初のレースを制し、天国の父に弔い星を届けた。

 だが、その日の午後に行われた札幌2歳S(G3)。締め切り時点で4番人気に支持されていたのが、ドゥラメンテ2年目産駒のダークエクリプスだった。応援馬券も決して少なくなかったであろう父の弔い合戦で好走が期待されたのだが……。

 ファンファーレが鳴り響き、ゲートに収まるまでは大人しかったダークエクリプス。ところが、発走直前に暴れ始めると鞍上の和田竜二騎手を振り落とし、ゲートの前扉の下をくぐり抜け放馬。外ラチへ向かって暴走すると、前代未聞の背面跳びで外ラチを派手に跳び越えて、背中で着地した。

 傷を負った同馬は結局、競走除外となり、父への弔い重賞Vはスタート前に幻と消えた。

 翌週以降もドゥラメンテ産駒は次々と重賞レースに登場。11日の紫苑S(G3)には、スイープトウショウを母に持つ良血クリーンスイープが8番人気で出走したが、道中早めに手応えをなくすと、まさかの最下位18着に大敗。弔いの重賞V挑戦はまたも失敗に終わった。

 19日にはアイコンテーラーがローズS(G2)で17番人気を大きく上回る8着と善戦。いい流れで、翌20日セントライト記念(G2)のタイトルホルダーとレインフロムへヴンにバトンを渡した。ところが、産駒唯一の重賞勝ち馬のタイトルホルダーは直線まさかのドン詰まり。レインフロムヘヴンとともに2桁着順に沈んだ。

 スタート前の除外、直線で行き場なし……。弔いの重賞Vを狙ったドゥラメンテ産駒が次々と想定外の事態に陥るなか、26日の神戸新聞杯(G2)に登場するのがキングストンボーイ(牡3歳、美浦・藤沢和雄厩舎)だ。

 約5か月ぶりの復帰戦に選んだのはセントライト記念ではなく、長距離輸送となる中京でのトライアル。ダービー馬シャフリヤールも待ち受ける神戸新聞杯を選んだところに陣営の自信が見え隠れする。

「キングストンボーイといえば、前走・青葉賞(G2)で2着に入り、日本ダービー(G1)の優先出走権を獲得しました。ところが、藤沢和調教師は『馬の将来を考えると無理はできない』と自身最後のダービー出走を諦めたことも話題になりました。

デビューからずっとC.ルメール騎手を乗せていて、同馬の将来性を高く評価しているということが分かります。ひと夏を越して精神面の成長も顕著なようですよ。この秋に大きくステップアップする可能性は高いと思います」(競馬誌ライター)

 シャフリヤールを筆頭に好メンバーがそろった一戦。キングストンボーイはここで“想定外”の弔い星を父に捧げることになるのか。藤沢調教師の最後の秘蔵っ子が大物食いを狙う。

(文=中川大河)

<著者プロフィール>
 競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。

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