凱旋門賞(G1)騎乗で武豊「乗替わり」は千載一遇のチャンス? 5億円馬ドーブネは快勝も、スプリンターズS(G1)のメイケイエールへの影響はいかに?
日本時間の3日(日)午後11時5分にゲートが開く凱旋門賞(G1)。世界最高峰と言える同レースは、今回でちょうど100回目、日本から参戦するクロノジェネシスとディープボンドは、その歴史に名を刻むことができるだろうか。
そんな出走馬たちをはじめとする、我らが日本勢。はるばるフランスへと遠征しているオーナーや厩舎関係者の中で、日本人として唯一、凱旋門賞に参戦する騎手がいる。世界を股にかけて戦うスーパージョッキーの武豊騎手だ。
競馬界ではワールドワイドな知名度を誇る同騎手も、当然ながら身体はひとつ。今週は日本の競馬場でその姿をみることはできず、「前走・武豊騎手」からの乗替わりが発生している。
例えば2日(土)、2歳オープンの中京9RききょうSでは、“5億円ホース”のドーブネが出走。デビュー戦を勝利に導いた武豊騎手に替わり、2戦目の鞍上は吉田隼人騎手にチェンジした。結果は、乗替わりや圧倒的1番人気の重圧に負けることなく完勝。同馬の実力を遺憾なく発揮する騎乗ぶりをみせた。
こうした現象は、明日3日(日)の開催でも発生する。
なんといっても注目を集めるのは、スプリンターズS(G1)に出走するメイケイエールが池添謙一騎手へ乗替わる点だろう。もちろん、武豊騎手が「難しい馬ですね」と話した同馬を乗りこなす可能性を秘めた実力を買われて、池添騎手が指名された面もあるが、以前から武豊騎手の不在が決まっていたのも理由のひとつだ。
また中京メインに組まれているポートアイランドS(L)でも、昨春のクラシック路線を賑わした実力馬マイラプソディが松田大作騎手へ乗替わり。同馬は過去10戦中9戦で武豊騎手が騎乗していた“お手馬”で、蜜月の仲のキーファーズの所有馬でもあることから、代打騎乗に指名された松田騎手も力の入る一戦となるかもしれない。
力が入るといえば、“千載一遇”のチャンスを得た若手騎手たちも同じだろう。
数多くの有力馬に騎乗する武豊騎手の騎乗馬に乗ることは、デビューして間もない騎手たちにとって稀な出来事であり、貴重な体験になるはずだ。
中京3Rの2歳未勝利戦に出走するシャランガーナは、新馬戦から武豊騎手が騎乗も、今回は亀田温心騎手へ乗替わり。ちなみにこちらもキーファーズの所有馬だ。また中京12Rでは「前走・武豊騎手」からの乗替わり馬が2頭も出走。シャークスポットは新人の小沢大仁騎手へ、メイショウベッピンは泉谷楓真騎手へと乗り替わる。
3人にとって、今回の騎乗馬は全て初騎乗。世界の武豊騎手の代打に指名された若手騎手たちは、テン乗りで挑むことになる。キーファーズの所有馬をはじめ、そう簡単には継続騎乗とはならないだろうが、好結果を出せばやはり関係者の見る向きも変わってくるのではないだろうか。いずれにせよ3人にとってはチャンスであり、絶好のアピールの場となることは間違いない。
憧れの大先輩が騎乗した馬への騎乗機会を得た若手ジョッキーたちは、果たしてどんな騎乗ぶりをみせるか。武豊騎手が不在の日本の競馬で、そんな点にも注目してみて欲しい。
(文=鈴木TKO)
<著者プロフィール> 野球と競馬を主戦場とする“二刀流”ライター。野球選手は言葉を話すが、馬は話せない点に興味を持ち、競馬界に殴り込み。野球にも競馬にも当てはまる「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を座右の銘に、人間は「競馬」で何をどこまで表現できるか追求する。