JRA「再評価」リーチザクラウンから怪物候補が誕生!? 「パニック」でも6馬身差圧勝に幸英明も興奮、陣営も驚いた衝撃デビューの裏側
3日、中京競馬場で行われた4Rの2歳新馬は、幸英明騎手が騎乗したクラウンプライド(牡2、栗東・新谷功一厩舎)が快勝。5番人気の伏兵評価ながら、終わってみれば2着馬に6馬身差をつけるワンサイドゲーム。ただただ勝ち馬の強さが際立つ結果だった。
もしかしたら後の「ダートの怪物」が誕生した瞬間かもしれない。
クラウンプライドという馬名から伝わるようにリーチザクラウンの産駒。現役時代の父は芝のレースで活躍したが、種牡馬としてはダート適性にも問題はなさそうだ。
10頭立てで行われたダート1800mのレース。3枠3番から無難にスタートを決めたクラウンプライドだが、大人しかったのは最初だけ。2コーナー入り口頃にはスイッチが入り、行きたがる馬の制御に苦労する幸騎手の姿が映像でも確認できるほど……。
「強かったですが、前進気勢が強過ぎましたね。1コーナーから向こう正面にかけて引っ掛かる感じになりました」
レース後のコメントで幸騎手がそう振り返ったのは、おそらくこれを意味していると推測可能だ。その後、1000mに差し掛かった辺りでも、幸騎手とクラウンプライドの折り合い合戦は続いていく。
通常の馬なら道中でここまで鞍上と喧嘩をするような格好になると、体力の消耗が著しく、直線で息が持たなくなるのが一般的である。道中で見せたクラウンプライドの姿は、明らかに典型的な負けパターンとなるはずだった。
ところが、普通の馬なら最後の直線でズルズルと後退するはずのクラウンプライドは、むしろ前の馬との差を詰めていく。残り200mで先頭へ躍り出ると、後続を突き放して悠々とゴールしたのだから、「タダモノではない」と思うなということに無理がある。
「勝ちタイムこそ特別目立ちませんでしたが、特筆すべきはレースの内容です。あれだけ引っ掛かっていては、距離に不安を感じずにはいられませんが、それでも勝っているという事実を評価した方がいいでしょう。
幸騎手の説明によると『砂を被ってパニック』になっていたということですから、前進気勢が強過ぎるという課題よりも、まずはポテンシャルの高さが優先です。将来的にスプリンターとなる可能性もなくはないですが、折り合いに進境を見せられれば、距離はこなせそうです」(競馬記者)
レースを振り返ってみれば、走った距離はダートの1800m。誤魔化しの利く短距離ならともかく、直線の長い中京の中距離を走り切った上にまだ余力を感じさせる圧勝なのだから、底知れないスタミナの持ち主であるといっても過言ではない。
後のG1馬であるアンライバルド、ブエナビスタ、スリーロールスが、一堂に会したこともあり、「伝説の新馬戦」ともいわれたレースで2着と健闘したリーチザクラウン。クラシック三冠では日本ダービー(G1)の2着が最高だったが、持って生まれたその高い能力を発揮するのに大きな障害となったのが、強過ぎた前進気勢だった。
現役引退後は種牡馬となり、産駒の成績が好調なことから再評価され、社台スタリオンステーションに移動することもあったが、アロースタッドに出戻った。クラウンプライドが今後も期待に違わぬ活躍を見せれば、再び評価される日もそう遠くはなさそうだ。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。